SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol.14, No.3, June. 2005

6. 中国の送電ネットワークで大容量HTS送電ケーブルの
実証試験が成功裏に実施される_ASC_


 この度、American Superconductor Corporation(ASC)は、「中国の4つの先進的工業研究所甘粛ケーブル・プロジェクト推進チームの共同的努力によって、75 m長―3相高温超伝導(HTS)電力ケーブルの実証試験が中国北西部の送電網の実ラインで成功裏に実施された《と発表した。当ケーブルは、ASC社が製造した線材を用いて製作されたもの。(SHANGHAI,China ,April 11 / PRNewswire-FirstCall/ )

電気工学院(IEE),中国科学アカデミー(CAS)及び物理学・化学技術院(TIPC)は、甘粛電力ケーブル会社と共に共同して本プロジェクトを推進した。広東電力ケーブル会社は、2004年12月以来当ケーブルの運転をしており、ガンス州バイインにある広東の工場地帯へ電力を供給している。これらの結果は、現在上海市で開催されている第8回超伝導会議で発表されている。

科学アカデミー応用超伝導研究所所長のLiye Xiao博士によれば、本ケーブルプロジェクトは、大容量HTS電力ケーブルが成長しつつある中国経済の電力需要を満たすのを助ける重要な手段であることを実証する上で重要なステップであると言う。博士は、「中国の電力需要は、年々劇的に増え続けよう。我々は、大量の電力*成長しつつある経済の血液である*を工業地、商業地及び住宅地に輸送する革新的な方法を一刻も早く見い出す必要がある《と語った。

2005年3月、国立中国送電系統会社(SGC)は寒冬及び経済の急成長によって引き起こされた電力需要の急激な上昇は、今年初以来21郡の送電系統を利用する顧客に対して停電の上便を課したと報告した。SGC社部長のL. Zhenya氏は、14郡系統と共に北地方、北西地方及び北東地方の3送電系統が、2005年1月から3月に掛けて各系統の歴史上最大の電力潮流を経験した事に注目している。

中国の電力消費は、北京市と上海市のような大都市センターでは年率2桁の割合で増加を続けている。中国の発電容量は、年率8 %の割合で増加を続ける一方、その送電及び配電システム−電気を発電機から顧客へ運ぶ送電線ネットワークの容量増加はより低い率の伸びが続いている。中国の送電系統への低い投資の帰結である系統中の混雑は、過去2年間経験した多数の停電の主原因の一つであった。

ASC社社長のG. Yurek氏は、「中国には、明らかに工場や家庭、商売を行う為さらに多量の電力需要がある。また、中国の送電及び配電システムを今後数10年に亘って大幅に拡張する必要があると云う認識が高まってきている。我々は、甘粛ケーブル・プロジェクトの成功を喜んでいる。本プロジェクトは、この10年の残りと次の10年間に、より大きな実証プロジェクトと大容量HTS電力ケーブルの商業的採用に繋がると考えている。《と語った。

甘粛電力ケーブルは、ASC社のHTS線材を用いて世界中で今日進行している多数の実証プロジェクトの一つにしか過ぎない。ASC社製HTS線材を用いる追加的ケーブル実証試験には、Nexans社がNY. Long Island、東ガーデン市のロングアイランド電力局の送電線系統に設置するため製作中の送電級電力ケーブルが含まれている。同じくASC社製HTS線材を用いる2件の配電級ケーブルプロジェクトが韓国のLSケーブル会社とメキシコ、ケレタロー市のCondumexケーブル会社によって推進中である。ASC社は、2006年に実施予定の追加実証プロジェクトのため、2005年内に線材の注文を期待している。

甘粛ケーブル・プロジェクト:本プロジェクトは、IEEがスポンサーになっており、MST、CAS及び甘粛電力ケーブル会社が資金援助を行っている。ケーブル導体と端末装置は、IEEによって設計され、製作された。冷凍システムとケーブルの絶縁体はそれぞれTIPCとバオフェン・ケーブルグループによって製作された。ケーブルの断熱管用接続器具は、シェンチェン・ウー社が製作した。

当ケーブル自身は、6.6 kVの配電電圧で稼動する75 m長‐3相システムで成り立っている。常温誘電体設計の当ケーブルは77 Kの温度で液体窒素により内側から冷却される。予備テストにおいて、本ケーブルの定格電圧は10.5 kVに引き上げられ、AC電流は400 Vで1600 Aまで流れた。これは、単に工場で利用可能な負荷によって制限されたためであった。このテストは、CASの技術者によって行われ、臨界電流値はDC及びACでそれぞれ5300 A, 3500 Aであることが分かった。

計画によれば、2005年の残りの期間中当ケーブルを連続運転し、その後ケーブルの動作特性と諸能力をもっと詳細に知るために、ケーブルのすべての部品について内部検査を実施する予定であるという。

  (高麗山)