SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol.14, No.3, June. 2005

3. 高速鉄道車両用の超電導主変圧器の試作
*高温超電導線材(ビスマス系)を用いた主変圧器_鉄道総研_


 (財)鉄道総合技術研究所では、富士電機、大陽日酸、九州大学の協力を得て、超電導技術の利用により、小型軽量な高速鉄道車両用の主変圧器の研究開発を進めている。この度、新幹線等の高速鉄道で使用される架線電圧25,000 Vに対応し、最大出力3.5 MVA級の主変圧器を試作したと6月16日に発表した。

 交流電車等に使用される主変圧器は、架線に流れる高圧の電気をパンタグラフで受けた後、列車の駆動や空調機等の旅客サービス用の電圧に下げるための機器で、車両に搭載するため、小型・軽量であることが望まれている。

今回試作した主変圧器の最大の特長は、通常銅またはアルミニウムを使用している主変圧器の巻線に高温超電導線材(ビスマス系)を使用していることである。同じ断面積で比較した場合、ビスマス系超電導線材は、銅などに比べ大きな電流を流すことができるため、軽量にすることが可能となる。また、冷却には安価で取り扱いの容易な液体窒素を使用できる。

通常の主変圧器は電車の床下に取り付けられるが、今回のものは開発の第一段階として、床上に設置する構造として試作した。完成した超電導主変圧器の概略寸法は、幅1.2 m、奥行き0.7 m、高さ1.9 m (圧縮機を除く)で質量は1.71 t(冷凍機、圧縮機を除く)である。鉄道車両用主変圧器の試験方法を定めたJISに準拠した試験を行った結果、超電導状態での最大出力は3.5 MVA相当であり、耐電圧試験の結果も良好で、高速鉄道車両用主変圧器の電気的要求仕様に対応できるレベルのものとなっている。今回試作した主変圧器では、交流搊失が6.2 kWと大きく、超電導化の効果が充分ではないが、今後の高温超電導線の開発により交流搊失が理論値に近づき、搊失の低減と小型大容量の冷凍機の開発が進めば、軽量で高効率な高速電車用主変圧器としての実用化が期待できる。

この研究開発の一部は、国土交通省の補助金により行った。

  (るるる)