SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol.14, No.2, April. 2005

6. ASC社はシーメンス社と共に限流器開発を再開する
  _ASC社/シーメンス社_


 American Superconductor Corporation (ASC)とシーメンス社は、ASC社製2G線材を用いて事故電流限流器(FCL)部品を製作・テストすることにより、商用HTS事故電流限流器を開発し、市場開拓するため戦略的連合体を形成した。ASC社は、以前に1G HTS線材の高コストのためにFCL開発努力を中断した事がある。今回の連合形成に先立って、シーメンス社とASC社はヨーロッパ、カナダ、米国の電力会社と“商用事故電流限流器の性能及び経済的要件”を規定するために協同作業を行ったと報道されている。これらの情報に基づき、両社は共同してASC社2G線材とシーメンス社FCL設計に基づいてFCL実証に向けてロードマップを創り上げた。協定書の諸条件の下、シーメンス社はそのFCL設計の性能要件を創り、ASC社はこれらの要件を満たすように自社の標準線材を調整する。最初のR&D製作に向けて、シーメンス社への線材の出荷は今年中に行われる予定。(Superconductor Week誌2005年2月21日号 Vol. 19, No. 3 )

シーメンス社とASC社は、1990年代初め以来FCLの開発に携わっており、入手出来るHTS材料の異なる配置を利用してきた。同社は2000年にFCLの開発を中止した。その時最初のR&Dは線材が法外に高価であることに加えて、1G線材はFCL向けの適当な電気特性を持たない事を示したからである。ASC社の技術者は、自社の2G線材はHTS FCLの要件により適合していると考えており、ASC社はFCLが市場で生き残れるほどに線材コストを低減出来ると主張している。

IGC社とNexans Superconductor社は、メルト・キャスト法バルク超伝導体(これは超伝導体の焼搊リスクを低減する為に開発された技術の一部である)を用いて、FCLを開発中である。その超伝導材料が既存の技術を用いて製造されるIGC社 / Nexans社とは違って、シーメンス社 / ASC社のFCLコンセプトは2G線材を低コストで大量に製造出来る能力を断言されており、大きな技術的チャレンジを提供する早業とされる。これら両アプローチは、多数の材料科学及び高電圧工学問題、その他障害物に直面することになるだろう。

ASC社によれば、機械的補強及び追加的熱容量のためにステンレススチール(SUS)を積層した安定化材を使用する事は高価になろう。1G線材に基づくFCLは、30,000 cm3即ち10.7 kmの線材を必要とする。10 $ / mの1G線材を用いると、標準コスト目標は達成できそうもなく、線材だけのコストが107,000 $、その他を含めた全体FCLのコストは200,000 $と予想される。

正当な電気的ならびに機械的仕様と共に、もし2G線材を2~4 $ / mで製造出来れば、状況は全く異なったものになるだろう。2~4 $ / mの2G線材13.6 kmを用いるとすると、目標2G線材コストは少なくとも2.7~5.4万$、即ち1G線材コストの約4分の1~2分の1になるだろう。

ASC社は、2G線材を用いるHTSコイルについて、直列及び並列型抵抗性FCLコンセプトを検討した。直列抵抗型FCLは、並列抵抗型FCLに比して単純さの有利性を持つが、並列型FCLは、潜在的に近接時間内に起きる多重限流動作にたえる動作上の有利性を有する。ASC社は、インダクティブ限流器は考えていないが、そのケースでは抵抗性FCLほど単純・コンパクトかつ低コストとは考えていない。

ASC社は、HTS型限流器応用の特別の要件を心に留めてコーティド導体を開発中である。同社のFCL向け2G線材は、機械的に強く、電気的且つ熱的に安定するように、0.5 mmの薄いSUSテープに積層される。ASC社は、適当な積層技術を成功裡に開発し、良好な機械的特性を持つサンプルを出荷している。ASC社及びシーメンス社は、最近試験的に製造している10 m長の2G線を用いてFCL開発を開始するようである。

  (高麗山)