第8サイクルは平成16年7月26日の真空排気から始まり、8月11日からの約1ヶ月の超伝導コイルの冷却と励磁試験を経て、9月17日から翌平成17年1月20日までプラズマ実験が実施された。第8サイクルにおける運転は順調に進み、平成17年2月15日には室温までの加温が終了した(図2参照)。
プラズマ実験は17週間、57日にわたって行われ、この間7398回のプラズマ放電を実施した。通常、3分に1回、プラズマ放電を行っており、この高繰り返しを可能とする能力は定常性と直結している。大型装置では運用の柔軟性に欠け、ともすれば実験効率が低下しがちであるが、LHDでは超伝導コイルによって定常的に発生される磁場に加えて、排気や加熱装置、そして除熱についても効率の高い運用に耐える工夫がなされている。また、各種実験機器の同期やインターロック動作、データ処理システムも定常運転に対応できる能力を持っている。第8サイクルでの超伝導コイルを極低温に保った定常運転時間は3216時間、 LHD低温システムの圧縮機起動から停止までは4814時間の安定な連続運転を行った。1998年の実験開始から、 第8サイクル終了までのLHD低温システムの積算運転時間は36753時間、超伝導状態を維持した定常運転の時間は25031時間、コイル励磁回数は891回、プラズマショット数は56220回に達しており、大型超伝導・低温システムの高い信頼性を実証している。
これらの基盤に合わせて、長時間運転に関連したプラズマ加熱装置の定常運転化をはじめとする装置工学技術からプラズマと壁の相互作用に関する物理学に至る広い範囲の学術研究の積み重ねを活かす環境が整い、この第8サイクルでは高温プラズマの長時間保持を最優先課題として位置づけ、実験研究に取り組んだ。主たる進展はプラズマ真空容器内に3対の高周波アンテナを設置し、これによるイオンサイクロトロン共鳴加熱の定常化をはかったことによる。イオンサイクロトロン(ICRF)加熱を主に用い、電子サイクロトロン(RCH)加熱と中性粒子ビーム(NBI)加熱を補助的に追加する方法で行われた。この結果、磁場強度2.75テスラにおいて、プラズマの温度は2000万度、密度は7*8兆個 / cm3の高温プラズマを31分45秒に亘り連続して閉じ込め、保持することに成功した。
この高温プラズマ長時間保持の成果は、LHDがプラズマ中に電流を必要としない、即ち、外部の超伝導コイルだけで閉じ込め磁場を作るヘリカル磁場方式であることと、それを支える超伝導システムの高い信頼性に裏づけられていると言える。
図2 LHD第8サイクル運転経過
(TM)