SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol.14, No.2, April. 2005

4. 世界初の液体窒素冷却全超電導モータが完成
  _石川島播磨重工、住友電工、大陽日酸、ナカシマプロペラ、
新潟原動機、日立製作所、福井大学、富士電機_


 石川島播磨重工業を中心とする産学グループ(石川島播磨重工業、住友電気工業、大陽日酸、ナカシマプロペラ、新潟原動機、日立製作所、福井大学 杉本英彦教授、富士電機システムズ)は、すべてのコイルを超電導化し液体窒素冷却で運転可能な世界初の全超電導モータを開発したと4月14日に発表した。

産学グループでは、世界で初めてBi2223高温超電導線材を液体窒素で冷却する実用レベルの超電導モータを開発し、本モータを内蔵した船舶用ポッド推進装置を完成させて、推進装置の水中稼働試験に成功したことを本年1月20日に発表している (本紙Vol. 14, No. 1, 2005.2 で既報)。前回発表されたモータは界磁のみがBi2223線材で超電導化されており、電機子は銅コイルが使われていた。前回の発表の中では、電機子も超電導化した全超電導モータを引き続き開発中で、3月には完成予定とされていたが、今回電機子にもBi2223線材を用いて全超電導モータが完成したもの。

従来の超電導モータや超電導発電機などの回転機では、直流が流れる界磁のみ超電導として回転子とし、交流が流れる電機子は空心の銅コイルを固定子とすることが多かった。今回開発された全超電導モータは、線材の経験磁場を減らすためのフラックスコレクター(商標登録申請中)が界磁および電機子の両方に使われており、これによって交流が流れる電機子コイルも低交流搊失化が実現している。

更に従来の超電導回転機ではローター内部を冷却するために冷媒を軸経由で流入させる機構が必要で、回転機の信頼性、メンテナンス性に難があったが、今回の超電導モータでは超電導部分は全て固定して、回転する部分を誘導子として追加している。誘導子はコイルが無いので冷却は上要であり、モータの軸も両側が使用可能となった。これによって軸部からの冷媒導入や電源供給が上要となり大幅に信頼性が向上している。超電導部分の固定化も今回世界で初めて実現した技術である。また、モータ軸の両側が使えることでモータ軸の2重構造化が可能になり、例えばモータを2台つないで2台の回転方向を逆にすることも可能になる。これによって船舶用モータでは2重反転プロペラが実現して更なる推進効率の向上につながる。

産学グループでは出力400 kW、回転数毎分220回転全超電導モータの製品化の見通しを既に持っており、平成17年8月販売開始を目標に精神検証試験に入る予定である。同時に全超電導2重軸モータを使用した、超電導2重反転型ポッド推進装置の開発にも着手し、さらに5000 kW以上の大容量モータの検証を行うための試験機の開発も行う計画である。

今回の開発のとりまとめ役となった、石川島播磨重工業技術開発本部の竹田敏雄部長は、「本年1月の発表以来、多くの引き合いをいただいているが、今回全超電導タイプが開発でき、更なる需要の拡大を期待している。また、2月16日に地球温暖化防止のための京都議定書が正式発効し、本技術が海上輸送分野での炭酸ガス排出削減に大きく貢献できるものと確信している。《と述べている。


図1  全超電導モータの外観
   矢印の部分が誘導子で回転する部分。中心が固定電機子、両端が固定界磁

  (HTS)