SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol.14, No.2, April. 2005

2. 超電導リニア *5年間の成果がまとまるー _JR東海、JR総研_


 山梨実験線で走行試験が続けられている超電導リニアは、平成12年度からの5年間の走行試験を無事終えて、国土交通省の「超電導磁気浮上式鉄道実用技術評価委員会《(委員長:正田(まさだ)東京理科大学教授)《(以下、評価委)は、3月11日の委員会にて「超電導磁気浮上式鉄道について実用化の基盤技術が確立した《と評価したことを発表した。評価結果の詳しい内容については、国土交通省のホームページに評価報告書が添付されている(http://www.mlit.go.jp/kisha/kisha05/08/080311_.html)。

国土交通省、JR東海及びJR総研発表のプレスリリース資料等の各種情報をもとにして、この5年間の成果並びに委員会での評価結果について報告する。

 この5年間の走行試験は、平成12年3月に行なわれた評価委において指摘された「信頼性・耐久性の検証《「コスト低減技術の開発《「車両の空力的特性の改善《の3つの課題を中心に行なわれてきた。

「信頼性・耐久性の検証《については、平成17年3月31日時点で累積走行距離43万kmを超え、累積試乗者数も9万吊弱となった。試乗会の運休がいままでまったくなかったことは特筆すべき点であり、信頼性の高さを裏付けるデータである。

「コスト低減技術の開発《については、建設コストを押し上げている地上コイル、電力変換器を中心に山梨実験線にて性能検証が行なわれ、コスト低減効果が実証された。また、車両の製作費についてもコスト低減に関する検討が進められ、営業線での製作費を想定することが可能となった。 

「車両の空力的特性の改善《については、平成14年7月から新型車両を導入し、車両運動、走行抵抗低減、車内環境の低減効果、沿線環境の低減効果等が確認された。

 平成16年度までの総合評価としては、冒頭に述べたように「超電導磁気浮上式鉄道について実用化の基盤技術が確立した《と判断し、技術評価と今後に向けた課題が示された。今後に向けた課題としては、「更なる長期耐久性の検証のため試乗を含む走行試験を継続して行うほか、高温超電導磁石等メンテナンスを含めた更なるコスト低減のための技術開発を進めるとともに、営業線適用に向けた設備仕様の検討を引き続き行うことが必要であると考えられる。《と指摘された。平成17年度以降も、試乗も含めた走行試験を概ね5年間継続することとなっている。

 JR東海とJR総研は、それぞれ評価結果について以下のようなコメントを発表した。

〔JR東海〕

○ 当社が進めてまいりました超電導リニアの技術開発につきまして、実用化に向けた技術的条件が整ったとの評価を得たと考えております。
○ 当社といたしましては、今後より一層、超電導磁石等のコア技術のレベルアップに取り組み、超電導リニアの完成度をさらに高めてまいりたいと考えております。

〔JR総研〕

 超電導リニア開発の歴史は東海道新幹線の開業よりも古く、当研究所は所内での基礎実験を手始めに、宮崎実験線から山梨実験線へと主たる開発の場を移しながら、長年、研究開発に勤しんでまいりました。  これらの集大成として、本日、このような高い評価を頂戴したのは大きな喜びと誇りであり、一つの大きな区切りを迎えたとの感慨がございます。  また、今日までの8年間に渡る山梨実験線での走行試験を無事遂行できましたのは、地元自治体をはじめとする、山梨県民の皆様の御理解と御協力があったからこそと存じております。ここに、厚く御礼申し上げます。

 平成17年度以降も山梨実験線での走行試験は前述の通り継続されるが、主体はJR東海に移り、JR総研はこれまで培ってきた超電導技術,リニアモータ技術など一連の技術やノウハウを在来方式鉄道に応用することを主軸に研究活動を進めることとし,併せて,そのために必要な技術力を維持するための浮上式鉄道に関わる研究開発を行なうこととなっている。(JR総研ホームページより)

 現在開催されている愛知万博では、JR東海が超電導リニア館を出展し、連日、盛況であるそうである。完成度の高さを実感されては如何でしょうか。


図1  超電導リニアに関する最近の改善技術

  (Mag-fan)