SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol.14, No.2, April. 2005

1. 世界最長500m高温超電導ケーブルフィールド試験が完了_古河電工_


 経済産業省のプロジェクトとして、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が、超電導発電関連機器・材料技術研究組合(Super-GM)に委託した「交流超電導電力機器基盤技術の研究《プロジェクトの中で、古河電気工業株式会社と(財)電力中央研究所と超電導発電関連機器・材料技術研究組合は、世界最長となる500 m超電導ケーブルのフィールド試験について全ての予定した試験を完了して、将来の高温超電導ケーブルの実用化に向けた基本的な技術の確立に成功したと発表があった。

高温超電導ケーブルは、現在の送電ケーブルよりも送電ロスを大幅に減らすことができ、コンパクトなサイズで大電力を輸送できるという特徴を持っていることから、特に都市部で増加する電力需要に対処するための送電技術として有用視されている。しかし、この高温超電導ケーブルを実用化するためには、延長数kmのケーブルを液体窒素で冷却しなければならないことから、基本的な運転特性や、液体窒素の長距離循環による問題などについて、詳細に確認する必要がある。そこで、古河電工が製作した500 m長の高温超電導ケーブルを、電力中央研究所 電力技術研究所(横須賀)に、レーストラック形状の試験レイアウトに、地中ケーブルを模擬した地中埋設部、河川横断橋梁添架を模擬した10 m高の高低差部、冷却・昇温時の熱伸縮を吸収するためのオフセット部など実際の布設形態を模擬した箇所を設けた立体的な線路形態に布設して、2004年4月よりフィールド試験を開始した。(本誌 2004年6月, 通巻第69号, Vol. 13, No. 3既報)

  フィールド試験は、布設検証試験、基本特性試験、定常運転試験、負荷変動試験、過酷限界試験を実施し、下記の試験成果が得られた。さらに500 m超電導ケーブルと同一形状の10 mケーブルサンプルを用いた短絡試験が実施されている。

 

○ 布設検証試験 :従来のCVケーブルと同様な工法で150 mmφの管路の中に超電導ケーブルを布設した結果、超電導特性に性能劣化が起きないことを確認した。

○ 基本特性試験 :ケーブルの電気特性、冷却・昇温時の熱挙動、定常冷却での熱侵入量などの基本特性の測定を行い、設計仕様を満足することを確認した。

○ 定常運転試験 : 試験期間を1ヶ月として、30年相当の寿命を確認する課電条件で、課通電運転を実施し、ケーブルの信頼性を確認した。

○ 負荷変動試験 :系統の日負荷変動を考慮した電流変動と、瞬時に0~100 %となる急激な電流変動に対して、ケーブルおよび冷却システムが追随することを明らかにした。

○ 過酷限界性能試験:停電や故障を想定して冷却システムが停止した状態で約3時間半の運転が継続してでき、ケーブルにダメージが無いことを確認した。これは、冷却システムのトラブルが発生しても、約3時間半の間で対応すれば十分であることを示している。

○ 短絡試験 :短絡容量対量として設計した31.5 kA、0.5秒の三相平衡電流が流れたときも、超電導体の健全性を確認し、短絡電流対策としての保護導体の有効性を検証した。さらに上平衡故障電流(1相通電、2相通電)が流れたときも、シールド層に電流が流れ、ケーブルに影響が無いことが分かった。

これら、フィールド試験の結果、超電導ケーブルが全長にわたり健全であることを確認し、さらに過酷・限界試験などの各種試験に耐えて信頼性が高いことを確認し、超電導ケーブルの設計、試験法、布設施工法、運用に対して実用化に資する大きな成果が得られた。

 これら成果に対して、本プロジェクトのプロジェクト・リーダーであるSuper-GMの安田健次交流機器技術部長は、「長期にわたる試験を安全に完了することができ、また有意義なデータもとることができた。本プロジェクトの成果を活用し、実系統への試験使用の機会が与えられることが望まれる。《と述べている。また、フィールド試験を担当した電力中央研究所電力技術研究所の市川路晴主任からは、「今回のフィールド試験は、500 mという長さと実線路に則した三次元形状の試験線路であったことから明らかになった課題も多く、この試験を実施したことは大変有意義であった。《と、また古河電工環境・エネルギー研究所環境技術開発部の向山晋一グループマネージャーは、「開発当初、冷やしただけで性能が劣化した超電導ケーブルも、今回、現用のCV/OFケーブルと同じ扱いをしても健全であった。これも、多くの方のご指導と、関係者の尽力によりなしえたことであり感慨深いものがある。《とコメントしている。

                                                                                     


図1 ケーブルの熱収縮を吸収するオフセット部


図2 超電導導体、シールドのI-Vカーブ


図3 超電導ケーブルの短絡試験状況


図4 三相短絡故障時の各相電流波形


図5 ケーブル構造

  (ネアンデルタール人)