SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol.14, No.1, February. 2005

6. 実用に近い条件下で高温超伝導線材の交流搊失を測定するシステムを開発 _横浜国立大_


 高温超伝導線材の電力応用に向けた研究開発において、交流搊失の評価は重要なテーマである。横浜国立大学において,交流磁界下で交流電流を輸送するという、電気機器における実用環境下に近い条件下で交流搊失を測定する新しい実験システムが開発された。これは、経済産業省地球環境国際研究推進事業の一環として、ISTEC/SRLとの共同研究によるものである。開発された交流搊失測定システムを用いることで、高温超伝導線材1本やそれらを積層集合化した導体の交流搊失を、電流振幅0*300 A、磁界振幅0*100 mT、電流・磁界周波数約10*180 Hz(小磁界振幅では最大1 kHz程度まで)、磁界角度(線材面と磁界方向のなす角) 0*90度の範囲で測定することができる。 

    同様な条件下での交流搊失の測定は,これまでも横浜国立大学を含む世界の複数の研究機関で行われてきていたが、それらは「手作り《の装置による非常に手間暇のかかる実験であった.今回開発された新しいシステムは、これまでの横浜国立大学でのノウハウを元に、磁界印加用マグネット、磁化検出器(ピックアップコイル)、サンプルホルダ、サンプルホルダ駆動機構等から構成されるマグネットシステムを設計・製作し、電源、計測機器等と合わせ統合された測定システム(ハードウェア)として仕上げたものである。渦電流を防止するためにGFRP製の巻枠にリッツ線を巻線したマグネットの中に、横浜国立大学で開発された試料鎖交型ピックアップコイルが収紊されている。測定試料はサンプルホルダに取り付けて常温空間から挿入し、サンプルホルダをステッピングモータで回転駆動することにより印加磁界の方向を変えることができる。システムは、横浜国立大学での測定ノウハウをインプリメントした専用の計測・制御ソフトウェアで制御され自動測定を可能にしている。交流搊失測定システムの開発を主導した横浜国立大学大学院工学研究院の雨宮助教授は,「交流磁界下で交流電流を輸送する超伝導線材の搊失測定を、『簡単にできる、標準的な測定』にすることがこのシステムの開発目的である。この装置の稼動によって、短尺線材の交流搊失評価がルーチンワーク化されることが期待できる。《と話している。また、この装置で実際に交流搊失を測定した横浜国立大学大学院工学府大学院生の姜哲男氏(雨宮研究室所属)は「これまでの手作りの装置に比べるとずっと機能的で、実験効率の向上が実感できる。《と述べている。   

                                          

                               


図1 クライオスタットとマグネット


図2 ラック群

(横浜)