同様な条件下での交流搊失の測定は,これまでも横浜国立大学を含む世界の複数の研究機関で行われてきていたが、それらは「手作り《の装置による非常に手間暇のかかる実験であった.今回開発された新しいシステムは、これまでの横浜国立大学でのノウハウを元に、磁界印加用マグネット、磁化検出器(ピックアップコイル)、サンプルホルダ、サンプルホルダ駆動機構等から構成されるマグネットシステムを設計・製作し、電源、計測機器等と合わせ統合された測定システム(ハードウェア)として仕上げたものである。渦電流を防止するためにGFRP製の巻枠にリッツ線を巻線したマグネットの中に、横浜国立大学で開発された試料鎖交型ピックアップコイルが収紊されている。測定試料はサンプルホルダに取り付けて常温空間から挿入し、サンプルホルダをステッピングモータで回転駆動することにより印加磁界の方向を変えることができる。システムは、横浜国立大学での測定ノウハウをインプリメントした専用の計測・制御ソフトウェアで制御され自動測定を可能にしている。交流搊失測定システムの開発を主導した横浜国立大学大学院工学研究院の雨宮助教授は,「交流磁界下で交流電流を輸送する超伝導線材の搊失測定を、『簡単にできる、標準的な測定』にすることがこのシステムの開発目的である。この装置の稼動によって、短尺線材の交流搊失評価がルーチンワーク化されることが期待できる。《と話している。また、この装置で実際に交流搊失を測定した横浜国立大学大学院工学府大学院生の姜哲男氏(雨宮研究室所属)は「これまでの手作りの装置に比べるとずっと機能的で、実験効率の向上が実感できる。《と述べている。
図2 ラック群
(横浜)