SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol.14, No.1, February. 2005

5. 超電導変圧器開発研究の現状_九州大学_


 酸化物超電導体を電力機器に利用する国レベルのプロジェクトの中で、ここでは超電導変圧器の開発の現状を概観してみる。図1に、日本(丸印)、米国(星印)、韓国(菱形)での主な研究開発プロジェクトにおける試作器(以下に示す例では、ほぼBi-2223テープ線を利用している)や開発目標の容量と電圧レベルを表わしている。黒塗りは、すでに特性試験により設計性能が確認できている開発器、白抜きは、開発の目標を示す。数字は開発年を、括弧付の数字は開発予定時期をそれぞれ表わしている。

 日本での研究開発の流れにおいては、九州大学と富士電機のグループの研究開発が発端となり、さらに九州電力が加わって、2000年に22 kV / 6.9 kV - 1 MVAの単相系統連系試験器が開発されている(本誌、45号3ページに掲載)。その後、NEDO推進のSuper-ACE (交流超電導電力機器応用基盤技術研究開発)プロジェクトにおいて、Super-GMと富士電機が、10 MVA級配電用変圧器のための要素技術の確立を図るために、2003年に66kV/6.9kV-2MVA単相プロトタイプ器を開発している(一部、本誌、62号4ページに掲載)。米国においては、エネルギー省が推進するSPI (Superconducting Partnership with Industry) プロジェクトの一環として、Waukesha, IGCとABB, AMSCの2グループにより1997年頃から研究開発が始められている。現在はこのうち前者のグループのみで研究開発が進められている。図1に示すように、Phase Iでの1 MVAのデモ器(Bi-2212線を使用)の製作の後、Phase IIIでの30 MVA プロトタイプ器の開発を目指して、昨年にはPhase IIでの目標の三相5 / 10 MVA プロトタイプ器の製作を完了している。この開発器の特性試験では、残念ながら、電気絶縁上良や搊失の問題などで定格運転ができていない。(http://www.energetics.com/supercon04) 故障の原因などを改良して計画を進めていく模様である。このような日本と米国の研究開発の流れを猛追するのが韓国のCASTが推進するDAPAS (Dream of Advanced Power system by Applied Superconductivity technology) プロジェクト(http://www.cast.re.kr/english/) である。商用化が目標の3rd Phaseで開発予定の100 MVA - 154 kV器を目指して、1st Phaseで1 MVA - 22.9 kV単相器の開発を終えている。図1で分かるように、この開発器は、日本で2000年に開発された系統連系試験器に相当する技術水準に達していることを示すものである。今年からの2nd Phaseで5 MVA -154 kVパイロット器を開発する計画を持っている。

 現時点では、Super-ACEで開発された配電用変圧器のプロトタイプ66 kV / 6.9 kV - 2 MVA単相器(図2に概観写真を示す)が世界的にみて最高水準の技術レベルとなっている。富士電機システムズ(旧、富士電機)で開発を担当した八木裕治郎部長によれば、「大電流モデルコイルやプロトタイプ器の開発を通して、大電流・低搊失の導体構成技術やJEC準拠の電気絶縁技術など、10 MVA級の配電用HTS変圧器を実現するための基盤技術は確立できている《とのことである。図1に示しているように、米国、韓国では、国家プロジェクトとして、この日本での研究開発の到達点をはるかに凌ぐ未踏の技術レベルへのチャレンジが計画されている。日本では、Super-ACEが終了することを考えると、これまでに蓄積されてきた関連技術をいかに有効に継承・展開していくかが課題になる。 

                                          

                               


図1 HTS変圧器の研究開発の動向


図2 66kV/6.9kV-2MVA器

(バイオ)