SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol.14, No.1, February. 2005

12. ビスマス系高温超電導線材が「日刊工業新聞社十大新製品賞(増田賞)《を受賞_住友電工_


   日刊工業新聞社はこのほど同社が主催する「2004 年(第47回)十大新製品賞 増田賞《として住友電気工業が開発を進めているビスマス系高温超電導線材(Bi2223銀被覆線材)を選定した。

「十大新製品賞《は、毎年、その年に開発・製品化され、発売された新製品の中から10点を厳選して表彰するもの。今回は本賞創設者の故増田顕邦氏にちなみ応募製品の中で、特に優れたものに贈られる「増田賞《に住友電気工業の「ビスマス系高温超電導線材を選んだ。贈賞式は、文部科学省の白川哲久文部科学審議官、経済産業省の齋藤浩産業技術環境局長ら多数の来賓出席の下、2005年1月27日に行われ、住友電気工業の松本正義社長に日刊工業新聞社の千野俊猛社長より表彰状と盾が授与された。

今回、「増田賞《を受賞したビスマス系高温超電導線材は、線材製作プロセスのうち超電導特性を決定する最後の重要工程である熱処理工程に、同社が独自に開発した「加圧焼成法《を用いて製造したもの。「加圧焼成法《を用いることで、ビスマス系超電導材料の密度が従来の85%から100%へと向上すると共に、長尺線材の歩留りが従来の20%から90%に増加し、無欠陥で1,000~1,500 mの長尺線材の量産が可能となった。

同賞の選定理由の中では、これらの画期的な技術開発成果、既に米国Albany ケーブルプロジェクト、韓国KEPRI向けケーブルシステムなどでの使用実績が評価されたのに加え、「研究を本格化してから18年間を要した。ひたすら開発、改良を繰り返し、実用化に至る「死の谷《を見事に超えた点に、すごみがある。《「高温超電導の物質が発見されたのは1986年。以来、世界のメーカが実用化に挑戦したが、厚い壁が立ちはだかった。住友電工がこの壁を越えるのをあきらめていれば、夢の技術が日の目を見るのは、何十年も先になっていたかもしれない。《と、住友電工の取り組み姿勢についても高く評価している。

加圧焼成技術の開発を初期の段階から担当してきた同社超電導開発室の小林慎一主査は、「従来の技術では、非常に狭い範囲の条件でしか必要性能を出せなかった。独自の製造装置をつくることに発想を転換してからは、装置メーカとタイアップして世界に類を見ない画期的な装置開発に成功し、またその運転ノウハウを蓄積して今回の開発に結びついた。現在様々な観点から本製法のBi線材の評価を進めているが、機械強度の大幅改善、上可逆磁場の改善など、従来のBi2223とは本質的に差があることが明らかになりつつある。今後は、DI-BSCCO(Drastically Innovative BSCCO)と呼んで従来との違いをアピールしてゆきたい。《と、本格的実用化に向けての抱負を述べている。

                              

                                          

                               

(ビス子)