中国での携帯電話は、現在China Mobile社とChina Unicom社の2社がサービスを展開している。China Mobile社は、GSM900(890~909MHz), GSM1800 (1710~1785MHz) のサービスを,China Unicomは、GSM900(909~915MHz),CDMA (825~835MHz)のサービスを展開している。今回、超電導フィルタシステムのフィールド試験を実施したのは、Unicom社のCDMA方式である。開発されたフィルタは、中心周波数830 MHz、バンド幅11 MHzである。図1に彼らの開発した超電導フィルタ+LNAの特性と、図2に開発したシステムの概観写真を示す。超電導バンドパスフィルタは、挿入搊失0.27 dB以下、帯域外遮断特性80 dB以上、スティープネス50 dB / MHzと極めて優れた特性を示している。また、超電導フィルタシステムがブレークダウンした時には、自動的に通常のフィルタシステムに移行できるようになっている。超電導フィルタシステムを冷却する冷凍機には、スターリング型冷凍機を使用している。
フィールド試験は、昨年の春に、北京郊外の唐山市で行われた。3セクターに分割された基地局の受信システムの1つを、図1で示されるようなフィルタ特性をもつ超電導フィルタに置き換えて、フィールドテストを行った。また、超電導フィルタシステムの優位性をよりはっきりさせるために,通常のフィルタシステムと比較できるようにした。その結果、超電導フィルタシステムを用いた場合には、携帯電話からの送信電力を約半分に下げても、通常の受信システムの時と同じ通話品質を確保できることが明らかとなった。すなわち、良く知られているように、超電導フィルタシステムを用いると、基地局のカバーエリアを大きくすることが可能であることを改めて実証したのである。また、その超伝導フィルタシステムは、10ヶ月以上無故障で現在も稼動している。
広大な領土を持つ中国では、基地局の数を減らすことも今後重要な研究開発要素の1つになることが予想される。超電導フィルタシステムはそのための有効な方法であることが改めて実証された。この成果を基に、今年の春には、3セクター全てを超伝導フィルタシステムに置き換えた基地局を数基作製し、北京市内でフィールド試験を開始する予定である。
図2 超電導フィルタシステムの概観写真
(雪灯篭)