SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol.13, No.5, October. 2004

4. 350m長HTSケーブルの布設が始まる!_SuperPower,住友電工,BOCGr.,NiagaraMohawk_


 2004年6月28日、ニューヨーク州オルバニーの2つのNiagara Mohawk変電所を繋ぐ350 m長HTSケーブル布設の起工式が、ニューヨーク州知事のGeorge E. Pataki氏、IGC社の子会社SuperPower社及び関係会社幹部の出席の下挙行された。住友電工、BOCグループ、YEPG (国内送電系統業者)は、プロジェクトリーダであるSuperPower社と共に、従来の銅ケーブルと比べて高効率、高信頼性、且つ高い安全性を持つHTS電力ケーブルのデモンストレーションを目指して共同している。

New York State Energy Research & Development Authority(NYSERDA)と米国エネルギー省(DOE)が当プロジェクトに資金を提供するというもの。(June28/PRNewswire-FirstCall/) Pataki州知事は、「ニューヨーク州は、クリーンな空気、エネルギー・セキュリティーの改善、そして持続可能な経済発展を促進する先端的エネルギー技術の推進者として米国内のリーダー的存在である。環境を保護しながら、系統の信頼性を高め、電力需要家により安価な電力の供給を可能とするSuper Power社のHTSケーブルのような革新的プロジェクトを支援できることを誇りに思っている。このような賢明な投資は、ニューヨーク州がクリーン且つ再生的エネルギー技術の開発における世界的リーダになるという野心的目標を達成するのに助けになる。《と語った。

Super Power社社長のPhilip J. Pellegrino氏は、「超伝導ケーブルは従来ケーブルに比べて3~5倊の電力を運べる上に、より効率的であり(平均7~10%の電力伝送に伴う搊失と関連したグリーンガス排出を低減できる)、より低い電圧で送電可能(昇圧・高圧トランスが上要になる)、ケーブル冷却には上燃性の液体窒素を使用する(漏洩あるいは過負荷時の火災あるいは爆発を回避できる)ということで容易に許認可されるだろう。」と語った。

Niagara Mohawk社副社長のMichael J. Kelleher氏は、「この地下ケーブルの設置は、エネルギーを消費者へ伝送する技術における重要な前進を表している。Niagara Mohawk社は、この強力な新技術が当社のオルバニー送電系統で成功裏に実証されることを期待している。《と述べた。

2600万ドルの費用が見込まれている4年間のAlbanyケーブルプロジェクトは、Niagara Mohawk Riverside変電所とMenands変電所間に敷設される1本のケーブルから成り立っている。2001年、NYSERDA が600万ドルを出資することに同意し、2003年には住友電工とSuper Power社の共同開発契約締結に続いて、DOEが1300万ドルの資金提供を決めた。Super Power社と共同開発に参加する民間3社が残りのコストを分担する。

住友電工:電力ケーブル、エレクトロニックス、通信ケーブル、自動車部材の世界的な開発兼製造者であり、超伝導研究開発には30年以上の経験を持っている。今回、350 m-34.5 kV-800 Aのケーブル製作を担当する。本ケーブルは、一端から30 mのところにジョイントを設けて送電系統の地下に敷設する予定である。プロジェクトの後半に、最初第1世代線材(Bi系)で製作した30 mセクションを、Super Power社が製作予定の第2世代線材を用いた同一長のケーブルで置き換えられるだろう。第2世代線材(Y系)は、HTSケーブルの商業的メリットを保証すべく妥当な価格と性能特性を持つことが期待される。

BOCグループ:世界的工業ガス、真空技術及び配布・サービス会社であり、超伝導ケーブルを冷却する極低温冷却システムの開発を担当する。極低温システムは信頼性と商用的特性を主眼に設計され、重要部品は運転中にサービスを受ける。新しいハイブリット構成により冗長度のある冷凍能力が生まれ大量の液体窒素の形で供給される。BOCは、ペンシルベニア州ベツレヘム市にある自社の遠隔運転センターを用いて、ケーブルと極低温システムをモニターし、生のデータを共同実験者に供給する。遠隔運転センターは、極低温システムの連続運転を保障するため、毎時間必要な干渉指令を供給できる(遠隔操作かサービス員を派遣するかによって)。

SuperPower社:IGC社の子会社であり、材料技術、極低温技術及びマグネット技術における核心性能を活用して、最新の第2世代線材と地下ケーブル、トランス、限流器などの電力機器を開発している。     

中国初のHTSケーブルが運転開始!

_Innopower Superconductor Cable_

この度、Innopower社が主導する中国初のHTS電力ケーブルがPuji変電所で運転を開始した。30m長、 35 kV x 2 kA、3相の当ケーブルは、常温誘電体絶縁材を用いた閉サイクル極低温システムである。Innopower社は、本ケーブルが2004年4月19日実系統で運転を開始して以来大きな事故は全くなく、全て設計パラメーターに準じた十分な性能を実証したと述べた。

本プロジェクトの主導開発者として、Innopower社はシステム設計、導体設計及び製作、ケーブル集合、システム設置、実地テストとプロジェクト全体の監督を請け負っている。同社は、下記の仕様を持つ常温稼動の架橋ポリエチレン誘電体絶縁ケーブルを開発した:ケーブル長33.5 m、定格電圧35 kV、定格電流2 kA、短絡電流20 kA x 2sec、ケーブル外径112 mm、最大曲げ角度90°。

本プロジェクト向けの資金は、4つの主要な出資者Department of Science & Technology、北京市政府、雲南省政府、Yunan Electric Power Group(YEPG)によって分担され、その合計額は3525万元(428万ドル)である。(Superconductor Week誌2004年8月4日号Vol. 18, No.8)

当ケーブル用Bi系HTS線材は、Innova Superconductor Technology Companyと審陽大学の応用超伝導研究センターによって開発された。Innova社が多芯線型Bi-2223超伝導線(エンジニアリング臨界電流密度(Je) 8500 A/cm2,臨界電流85 A, 最大引張り応力100 MPa, 最小曲げ半径30 mm)を製造した。Innova社は、200 km/年の製造能力を持っていると述べた。

導体撚り線とケーブル集合は、上海ケーブル工場が担当した。中国アカデミープラズマ物理学研究所は、端末装置の設計と製作を担当した。同研究所は、高温プラズマ物理領域の研究・開発を行い、プラズマ磁気閉じ込めや高磁界マグネットとプラズマ応用の開発を行っている。

ケーブルの低温収紊管と極低温接続は、HTSケーブル技術の開発に関して共同研究契約を結んでいるNEXANS社から供給された。NEXANS社が開発した極低温収紊管は、2本のフレキシブル・ステンレススチール製の同軸型コルゲート管より成り立つ。内管の外側部分はスーパーインシュレーション層で覆われ、低搊失のスぺーサーにより内側中心に内管を定置させて、内外両管の接触を防いでいる。分子的吸収作用により長期間の真空維持を図っている。低温収紊管の柔軟性により、従来ケーブルのように取り扱う事が可能となっている。

極低温システムの設計と施工は、中国エレクトロニックス技術会社の第16番研究所によって行われた。同研究所の解決策は、7セットのクライオメックAL300冷凍機を並列に稼動させると共にバーバーニッケル社製BNCP—30—000液体窒素ポンプを採用する閉サイクル液体窒素システムである。冷却容量は、75 Kで2 kW、液体窒素の流量は600~900 L/hである。

本ケーブルは、雲南電力公司(YEPG)により雲南省の中国南方送電系統中に布設された。当電力公司はまた定格電圧、定格電流、短絡電流、ケーブル長及び布設曲げ角度仕様を含む技術的要件を与えた。YEPGは、サイト準備と共にケーブルの運転に必要な、冷却ステーション建設及びケーブル鎧装を含むすべての基盤整備を実施した。YEPGはまた、本システムの実地試験を実施し、現在毎日の運転の責任を請け負っている。 

                               

(高麗山)/(相模)