この磁気分離装置はバルク超電導体の高磁場特性および回転膜技術を効果的に適用して実現したもので、超電導体の高い吸着力にて流体中の磁性粒子に汚染物質を取り込んで分離・除去する。開発コンセプトは、①湖沼のアオコ等の除去に柔軟に対応可能な移動型、②バルク超電導体の強い磁気力により高濃度浄化、③回転膜の組み合わせにより連続浄化、としている。 本装置のシステム構成を図1に示す。原水中の懸濁物を磁性フロック化する前処理部、磁性フロックを膜で濾過し浄化水を得る膜分離部、膜面に蓄積した磁性フロックをバルク超電導体の磁気力で剥離、捕集し、高濃度の汚泥として回収する磁気分離部から構成されている。磁気分離部を図2に示しているが、超電導工学研究所で開発された樹脂含浸型のバルク超電導体(YBCO)7個を真空容器に格紊しGM冷凍機にて45K程度に伝導冷却し、最大2 Tの磁場を保持している。本装置の概観を図3に示しているが、装置の浄化能力は汎用的な100 t / dayで、浄化時間は5分以内、上純物除去率は90%以上として開発している。 本装置による湖沼でのアオコ浄化試験結果を図4に示しているが、試験ではアオコの主成分であるクロロフィルaの除去率は97.8%、リンが64.8%、CODは70%で、処理時間は5分程度を確認している。また、工業団地の調整池では、水中に含まれている鉄分を97%除去し、浮遊物質量を90%浄化できる良好な性能を確認している。
装置を開発・試験した九州電力では、「今回の成果により、装置の実用化に一歩近づき,先駆的で環境に調和する身近な超電導技術の実現に貢献できたと考えている。今後、環境へのニーズが一層高揚する中で、用途の拡大、更なる性能向上および一層のコスト低減を図り実用化を促進したい。《と抱負を語っている。また、試験に参加された山藤馨低温工学協会長は、「環境に貢献する超電導技術の実証試験が成功したのは素晴らしく、今後の超電導材料や応用技術の進展に一層拍車がかかることを期待している。《とコメントしている。なお、装置は㈱日立製作所の協力を得て開発している。
図2 磁気分離部
図3 磁気分離装置の概観
図4 アオコ浄化試験結果
(Activity of KEPCO)