磁気シールド室の設計には3次元の磁気シールドシミュレーション技術を用いて最適な磁気シールド性能(-35 dB)を実現できる遮蔽性能を検討した。これにより、磁気シールド室を横幅1 m・高さ1.4 m・奥行き1.6 mの小型化を実現した。また、高感度の高温超電導SQUIDを安定に作成するため、自動式膜装置を開発し、51チャンネルの高温超電導SQUIDを安定に50 fT/√Hzで動作させることができた。高温超電導SQUIDはマグネットメーター型を使用し、リファレンスチャンネルを設け妨害磁場雑音の除去に用いている。
図1に51チャンネル高温超電導心磁計の全体構成写真を示している。本心磁計ではベッド上に高温超電導SQUIDユニットが一体で構成されている。そのため、ドーム型磁気シールド室の外部でセンサーと心臓の位置あわせを行い、ベッド全体をドーム型磁気シールド室内に送りこむことにより測定開始状態となる。患者はベッドに横になりドーム型磁気シールド室内に入るが、ドーム型磁気シールド室はオープン型であるため、患者に圧迫感を与えることなく計測を行なうことが可能である。図2に健常者の心磁図計測結果を示している。このように鮮明に心磁図波形を検出することが可能となっている。
当51チャンネル高温超電導心磁計は集団検診などの用途に広く使用されていくことが期待される未来型の心磁計である。今後は本開発で得られた多くの技術を生かしていき、製品化へつなげていく予定である。 日立製作所中央研究所 ライフサイエンス研究センタの神鳥明彦氏は「心磁計を広く皆様に使っていただいて、心臓病を早期に発見し直してもらいたい。《と語っている。
図2 健常者の測定加算データ(51チャンネル重ね合わせ波形)
(かんちゃん)