SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol.13, No.3, June. 2004

9.非接触・非破壊超電導臨界電流密度測定システムの開発     
_山形大学工学部・東北精機工業(株)_


 超電導薄膜や超電導線材の臨界電流密度を非接触・非破壊で測定したいという要望は非常に強い。特に、大面積超電導薄膜を用いた限流器の開発や現在精力的に研究が進められている希土類123系のcoated conductorの開発には、必要上可欠な測定装置である。現在まで、非接触・非破壊で臨界電流密度を測定できる手法としては、第3高調波を検出する誘導法が代表的である。しかしながら、Icの大きな超電導材料の測定が難しいことやコイルと試料との距離を厳密に制御する必要があることなど、幾つかの問題点が指摘されている。また、製造ラインに導入できるような検査システムでは無い。山形大学工学部の大嶋グループと東北精機工業㈱は、非接触・非破壊の臨界電流密度測定システムを開発したと発表した。このシステムは、永久磁石材料を用いた簡便な手法であり、再現性も良くまた外部ノイズや 振動にも強いという特徴があり、製造ラインに組み込むことも可能である。以下原理や応用について紹介する。  

  超電導体に永久磁石を近づけると、その磁界を遮るように超電導体にシールド電流が流れる。従って、超電導体と磁石との間に反発力が発生する。また、永久磁石を超伝導体から遠ざけると、超伝導体と磁石の間には逆に吸引力が発生する。この反発力と吸引力を精密に測定することにより、超伝導体に流れるシールド電流の大きさを測定し、臨界電流密度Jcを評価する方法である。図1に、試作した装置の外観写真を示す。磁石は、Sm-Co系の磁石を用い、反発・吸引力は荷重センサで測定する。永久磁石はステッピングモータにより滑らかに上下させている。また、磁石の上下移動、センサ信号の取り込み等は、パソコンにより自動化されている。図2に、磁石と超電導薄膜の間の距離に対する反発力・吸引力のヒステリシス曲線を示す。この曲線は、極めて再現性がよいこと、また振動にも測定精度が落ちないことなどが実証されている。磁石と超伝導体に働く反発力の大きさを、距離ゼロに外挿した値(a1)を試料厚(d )で割った値が、臨界電流密度に比例することが、その後の実験により確認されている。その結果を図3に示す。試料のJcは、誘導法により測定した結果を用いている。結果には、若干のばらつきが見られるものの、良い相関があることがわかる。 

  非接触・非破壊のJc測定装置は、大面積薄膜のJc分布や超電導線材のJc測定にも応用できるように現在改良中である。今後の応用範囲の広がりが期待できる。[装置に関する問い合わせ先:東北精機工業㈱横尾政好 023-685-6511]                   

                          


図1 測定システムの外観写真


図2 磁石に働く荷重のヒステリシス曲線(3回測定)


図3 反発力試料厚と臨界電流密度の相関

(雪燈篭)