SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol.13, No.3, June. 2004

8. ASC社製ビスマス系線材、磁気浮上列車のプロトタイプ・コイルに試用される ―JR東海の新設計コイルが低コストHTS技術の実用性を実証!
_米国ASC社_


 5月11日付け新聞報道によれば、American Superconductor Corporation(ASC)はJR東海が磁気浮上列車(MAGLEV)の浮上用マグネット向けに設計したプロトタイプ・コイルにASC社製ビスマス系線材を採用し、その試用は成功であったと述べた。(May11/PRNewswire*FirstCall/) 磁気浮上列車は、日本中央新幹線(東京と大阪をつなぐもうひとつのルート)向けに検討されている列車案である。引き続いて経済的ならびに技術的成功があれば、HTS電磁石は磁気浮上列車の最有力候補となるだろう。完全商用磁気浮上列車システムのHTS線材必要合計量は、1億mを超えると予想される。 

  JR東海は、HTSコイルを設計し、仕様的にはその高い臨界電流能力の故にASC社製ビスマス系線材を選択した。電流密度を最適化するため、ASC社は標準のステンレス・スチール積層補強工程を省いて裸の線を供給した。最終開発とコイル製作は、新しい製造技術を援用して東芝が担当した。最近の巻き線技術の改良により、磁気浮上列車の耐震要件を満たしながら、この特別な線材の電流密度を最大化することが可能となった。 

  ASC社社長兼主席執行役員のDavid Paratore氏は、「JR東海の磁気浮上列車向けHTSコイルの実証成功に貢献できて光栄である。我々は、HTS磁気浮上列車の成功を支援するため一生懸命働き、日本人の仲間と協働してきた。」と語った。 JR東海/鉄道技術研究所(RTRI)のLTSマグネットを用いる磁気浮上列車は、昨年末581km/hrの人間搭載世界最高速度記録を樹立した、軌道上10cm浮上・飛行しながら。LTS磁石からHTS磁石へ切り替えることによる有利性とは、資本及び運転コストの低減である、とJR東海は語っている。 

  HTS技術:JR東海の報告によれば、今回のHTSコイルは冷凍機直冷により冷却できるので、山梨実験線で試運転中のLTSマグネットに使用される液体へリウムは上要である。JR東海は、2005年3月25日開幕する吊古屋万博のJR東海パビリオン内にHTSコイルを展示する計画であるという。 

  2005年度ビスマス系線材出荷量は4倊に増加する見通し 

  ASC社の線材ビジネス部門は、2004年度に155kmのビスマス系HTS線を製造し、顧客へ出荷した。当部門は通常1000~2000m長の、同一サイズの銅線と較べて10倊の通電能力を有するHTS線(世界中の同業者が達成する性能を大幅に上廻っている)を製造している。ASC社は、2005年度期初に550kmを超す受注残を抱えているが、同年中に製造・出荷出来ると予想している。(May13/PRNewswire-FirstCall/) ASC社のYurek会長は、「F2005年度中に追加的受注があると期待しており、そうすると今年度は少なくとも650kmの線材を製造・出荷出来ることになる。これは、2004年度に比して4倊の増加であり、これから市場に登場していく超伝導工業にとっては明らかに世界記録である。2004年度に出荷した155kmからのこの急増 *我々の新線材工場での100%生産の1年に対応する* は、大変意義深いことと言えよう。 

  F2004年の最終4半期に製造速度加速を達成した実績と引き続き行われる製造効率の向上に基づくと、ASC社の成長に於ける次の重要なステップを成功的に達成出来ることを確信している。上記JR東海の磁気浮上列車プロジェクトに関連して、本年も追加の線材を製造・出荷する計画である。当プロジェクト向けHTS線の潜在的市場は極めて大きく、列車システム当たり1億mを超える規模であり、当社は当プロジェクトをリードすべく好位置にあると考えている。《と語った。 ASC社は、ロングアイランド電力当局(LIPA)の送電系統中に138kV送電ケーブルを設置する計画が設計・開発・製作関係を含めてスケジュール通りに進行していると報告した。ASC社製ビスマス系線材が用いられ、Nexan社により製作される本ケーブルは、スケジュール通りC2005年の年末までにLIPA送電系統中に設置される予定である。ASC社は、F2005年中に120kmのHTS線をNexan社に出荷出来るよう期待している。                  

                          

(高麗山)