SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol.13, No.3, June. 2004

1. 世界最長、500m高温超電導ケーブルの試験始まる
_電力中央研究所、古河電工_


 経済産業省の「交流超電導電力機器基盤技術研究開発プロジェクト《のなかで、超電導ケーブルの実用化に向けた研究が進められ、今春より既設管路への適用性検証が可能な世界最長となる500m高温超電導ケーブルを用いたフィールド試験が電力中央研究所電力技術研究所のケーブル試験場(横須賀地区)にて開始された。本プロジェクトは、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)より超電導発電関連機器・材料技術研究組合(Super-GM)が受託して、古河電工が500m長の高温超電導ケーブルの製造と同ケーブルの布設を、電力中央研究所が、古河電工と共同でケーブルのフィールド試験を実施している。

IT化などで都市部の電力需要が増加した場合、送電線を増強させる必要があるが、建設ルートの確保が困難な都市部において、新規の地下トンネルの建設は難しく、またその建設コストも高くなってしまう問題がある。超電導ケーブルは、液体窒素温度で超電導状態となる酸化物超電導線材を導体に使用することにより、送電ロスを大幅に減らすことができ、現用の送電ケーブルと比較して、軽量かつコンパクトで大容量の送電が可能となる。そのため、既設のケーブルを超電導ケーブルに置き換えることで、洞道を建設することなく、送電容量を上げることができ、またトータルの送電コストの削減が可能となる。

 今回のフィールド試験では、実送電系統に超電導ケーブルを導入するケースを想定し、冷却・昇温時における超電導ケーブルの機械挙動、冷却システム運転特性、電気絶縁特性、超電導導体通電特性等について検証する。試験の最終段階では限界性能を明らかにするための各種の過酷な試験も実施し、将来の高温超電導ケーブルの実用化に向けた技術課題を摘出する計画である。

 開発した高温超電導ケーブルは、77kV、1kAの仕様で、フォーマ上にビスマス系超電導テープを多数本巻きつけ、更にその上に、電気絶縁層、超電導シールド層、保護層を設けてケーブルコアを形成し、そのケーブルコアを断熱管(真空配管)の中に収紊したものである。古河電工では、新たに開発したケーブル構成により、線材性能をほとんど劣化させること無く超電導ケーブルを製造することに成功し、さらにスーパーインシュレーションを用いた断熱管においては、断熱構造の最適化と500mにわたりピンホールなどの欠陥のないステンレス製コルゲート管の製造技術により、直線状態で世界最小となる1 W/mの熱侵入低減に成功した。

 500m超電導ケーブルの試験レイアウトは、5mR曲がり部や地中埋設部、橋梁懸架を模擬した10mの高低差部をもち、さらに500mケーブルの冷却時の熱収縮を吸収するためのオフセット部など、実系統布設を模擬した部位をもち、多様な検証を可能としている。布設は昨年11月に完了したが、布設工事は現用のケーブルと同じに実施された。また、3月1日よりケーブルの冷却を開始し、4月19日に経済産業省およびNEDO技術開発機構からの来賓や関係者の出席のもとで開始式が行われ、約8ヶ月間のフィールド試験が開始された。 本プロジェクトのプロジェクト・リーダーであるSuper-GMの安田健次交流機器技術部長は、「長期にわたる試験であり、安全に完了するとともに有意義なデータを収集して欲しい。本プロジェクトの成果を活用し、実系統への試験使用の機会が与えられることが望まれる。《と述べている。

                               


図1 500m超電導ケーブル


図2 500m高温超電導ケーブル フィールド試験

(ネアンデタール人)