SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol.13, No.2, April. 2004

10. 〈第2回新磁気科学研究会報告〉 磁場を用いた反磁性セラミックスの異方性制御
_物質・材料研究機構_


 2004年3月12日に東京大学工学部で行われた2003年度第2回新磁気科学調査研究会において、物質・材料研究機構のコロイドプロセスを用いたセラミックスの研究を進めている鈴木達主任研究員らより、数mm程度の微粒子をpH制御することによりゼータ電位を調節し、数mm程度の微粒子をうまく微細分散させ、スリップキャスト法を経て良質なセラミックスが得られることが報告された(図1)。コロイドプロセスの有用性として微粒子の相互作用を把握し利用することが肝要で、微粒子を均一微細分散させることによって、大きめの細孔や残留欠陥の生成が抑制でき、小さな細孔は残るものの緻密な成形体の作製が可能であると語った。その例としてアルミナが1500°Cで550%も延びるというセラミックスとして初めての超塑性化の成功や(図2)、高速超塑性を実現したジルコニアを挙げた(図3)。この技術が進歩すればセラミックスにおいても圧延機を用いた成形に期待が持てる。

 コロイドプロセスによる強磁場中配向において、用いるサスペンションは体積分率が大きいほど緻密な試料ができる。しかし、大きすぎても粘性が大きくなり配向しなくなるため、粘性が最も小さい30 vol%の条件でスリップキャストを行い強磁場中成形アルミナ(室温、10T)が作製された(図1)。スリップキャスト後1200、1600、2000°Cにおいてそれぞれ2時間空気中で焼成した試料についてX線回折により配向度が調べられており、焼成温度が高いほどは強く配向し、同時に相対密度も100%に近づく傾向を示すことが明らかになっている。しかしながら1200°C焼成では配向度、相対密度ともに低下するという。このことより粒成長と配向度はリンクしていることがわかり、粒径が配向度を決めていると述べられた。

 最後に磁場中電気泳動堆積(EPD)法について説明があった。これは磁場によって磁化容易軸に粉末結晶の方位がそろっているスラリーに対して電場を与えることにより方位をそろえたままスラリーを堆積させることができる(図4)。電極板の向きを変えることによって磁化容易軸に対して任意の向きに堆積させることができるため、汎用性の高い配向プロセスであり高次組織制御を可能にするプロセスとなる。異方性をもつ物質に対して有利な結晶面を自在に制御できるため、今後の応用が楽しみである。


図1 スリップキャスト処理後、1873Kで焼成したアルミナの微細構造


図2 引っ張り変形加工前後の10Vol%TZP-Al2O3 


図3 0.20Wt% Al2O3—doped TZPの超塑性


図4 ±45°交互配向アルミナ積層コンポジット

(ΩS)