SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol.13, No.1, Feb. 2004

7. 10万接合を超えるSFQランダムロジック回路の自動配置配線ツールを開発
_超電導工学研究所_


 超電導工学研究所は、10万接合を超えるSFQ(単一磁束量子)ランダムロジック回路を設計できる自動配置配線ツールを開発した。ツールの詳細は2003年10月末に茨城県つくば市で開催の国際超電導シンポジウムで発表された。

 SFQ回路は半導体回路と異なり、量子化された磁束の有無で情報の‘1’,‘0’を表現する。1ビットを表現する磁束は数ピコ秒幅・数マイクロボルトの微小電圧パルス信号として回路中を伝搬する。そのため、半導体回路に比べて高速であり、しかも消費電力が少ないという特長をもつ。超高速・低消費電力特性から将来の超高速情報処理回路としてSFQ回路が注目されている。

 超電導工学研究所が開発したツールは、SFQ回路特有のパルス信号を情報担体とした、数十ギガヘルツ超高速クロック設計に対応する。従来の人手設計では2000接合程度の回路規模が配置配線の限界であった。しかも、配線の複雑さのために、回路動作速度はSFQ素子本来の動作速度の半分以下に制限されていた。市販の自動配置配線ツールもいくつか存在するが、そのどれもが半導体回路設計を前提としており、SFQ回路設計に向かない。半導体回路設計では回路全体がクロックに合わせて動作する同期式設計を行うのに対して、SFQ回路設計では超高速動作を実現するために、回路全体での同期をとらない非同期式設計を行っていることがその大きな理由である。新たにSFQ回路設計向けに開発したツールを使うことで、大規模かつ高速動作可能なSFQ回路を短時間で設計することができるようになった。設計フローは超電導工学研究所が開発し、ソフトウェア化は設計自動化ツール開発・販売の最大手である日本ケイデンス・デザイン・システムズ社が行った。本研究は、低消費電力型超電導ネットワークデバイスの開発研究として、新エネルギー・産業技術総合開発機構の委託により実施したものである。

 実際にこのツールを用いて約18万接合規模の大規模回路の自動配置配線を2時間半で完了した(図1)。回路動作速度は15ギガヘルツであるが、律速する経路を画面上に表示することも可能で、律速経路の再配線により動作速度を40ギガヘルツに向上できる。

 実際に設計手法開発と回路設計を行った亀田義男主任研究員は「この自動配置配線ツールのおかげで、今まで想像できなかった大規模SFQ回路を短時間で設計できるようになり、しかもSFQ素子の高速性を十分に回路速度に反映できるようになった《と述べている。


図1 自動配置配線ツールによって作成されたSFQ論理回路図

(輪)