SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol.13, No.1, Feb. 2004

6. 超伝導ケーブルの将来展望は明るい!


 National Institute of Standards and Technology (NIST)の新しい研究は、次世代高温超伝導線材が当初考えられていた以上の機械的歪みに耐えることを示唆したと報道されている。その結果、この将来線材を採用する超伝導電力ケーブルは、送電系統応用に用いられる公算が大変高いと言える。第2世代線材として工業界に知られているもっと進んだY系超伝導線が3~4年の内に実用化が計画されており、今日超伝導電力ケーブルに使用されているBi系線材よりコストが廉価になると期待されている。NISTのこの研究結果は、Applied Physics Letters誌の11月17日号に掲載されている。(http://www.gov/public_affairs/techbeat/tb2003_1121.htm)

 超伝導電力ケーブルは、従来ケーブルの3~5倊の電力を輸送できる。高密度の地下超伝導ケーブルは、電力系統の戦略的地点における容量と直接の電力量を増大させるために使用でき、巨大な需要はあるが追加的銅ケーブルのスペースがほとんどない都市中心部で用いられる。この次世代HTS線材をこのような応用に使用するという大きな挑戦は、電力ケーブルの製作及び設置の過程で起こる引っ張りと曲げに耐えうる十分な強度及び弾力への必要性に迫られているからである。

 ASC社とオークリッジ国立研が作成した金属基板上に成膜した超伝導セラミック薄膜を用いて、NIST研究者は材料の電磁気的特性を試験した。筆頭著者のN.Cheggour氏によれば、これら進んだ線材は何らのクラックもなく、薄膜の電流搬送能力を搊なうこと無しに、従来信じられていた歪量のほぼ2倊伸びることを見出した。

 さらに、NISTチームは、超伝導線の歪誘起による電流搬送能力の劣化は、ある臨界歪値までは可逆的である。即ち、材料は歪がいったん開放されれば最初の状態に復帰する。この将来線材の歪許容度は、最も需要の高い電力応用にとってさえ十分に高いことが見出された。今回発見された可逆的歪効果は、このクラスの超伝導線に於ける伝導を支配するメカニズムをよく理解する機会を与えており、新たな展開も期待できそうである。

(高麗山)