YBCO系Coated Conductorに関して、ORNLでは線材製造の簡便化やコスト削減に向けてバッファー層の作製をすべて溶液法で行う研究を進めており、Nb系やZr系のパイロクロア物質を中心に検討を進めている。ASCでは、RABiTS上でTFA-MOD法で成膜したYBCOについて、各熱処理過程でのTEM観察、X線構造解析を駆使してY123の結晶成長過程を詳細に明らかにした。このような詳細な調査から熱処理の最適化により、CeO2とY123界面に生じるBaCeO3の生成を抑制している。その線材2本をFace-to-faceで張り合わせることでIc=339A(1cm幅)を記録し、これはそれぞれのIcの和であり、張り合わせに問題がないことを示した。また、IFW-Dresdenでは、溶融バルクで顕著な上可逆磁界の増加が見られた(Nd-Eu-Gd)123相についても薄膜での作製が試みられ、高磁場でのJc向上に寄与することが報告された。この効果が薄膜材料においてもバルクで報告されているナノメートルサイズのピンニングサイトによるのか、そもそもそのようなピニングサイトが薄膜で存在するのか興味深いところである。
MgB2薄膜については、ある程度の合成条件の最適化が図られており、熱CVD法や共蒸着法などで39K級の臨界温度をもつ試料が報告され、基板とのミスマッチを利用したTcの向上(Tc ~42K)も興味深い。線材化では、LANLがPIT法で5%のSiCをドープした25メートルのMgB2ケーブルをコイル化し、25Kで1Tの磁場を、4K,1.25Tの磁場中で1.6Tの磁場を発生するのに成功している。この他、Bi系線材、物性、デバイスなど充実した報告があったが、内容が筆者の興味に偏っていることをご容赦いただきたい。
(東京大学:堀井 滋)