SQUID顕微鏡は、SQUIDの高性能な磁気検出機能を利用して、微小な領域からの磁場を検出し、センサを試料表面で2次元走査することにより、画像として取り出すことができる。Nb系SQUIDをカンチレバーに取り付けたSQUID顕微鏡が磁束観察用ツールとして利用されている。しかし、Nb系SQUIDでは、液体ヘリウムを用いる必要があることなどから、より汎用的な利用をめざした高温超伝導SQUID顕微鏡の開発が求められていた。
物質・材料研究機構では、図1のような高温超伝導SQUIDを用いたSQUID顕微鏡の開発を進め、走査探子として、針の先端をサブミクロンに尖らせたパーマロイの針を利用することで、ミクロンオーダーの磁気イメージを得ることに成功した。レーザプリンタで印字した数字の周辺にある微小なミクロンサイズの磁気トナー(図中の矢印A, B)を検出しており、高分解能であることが確認された。
従来はMFM(磁気力顕微鏡)が高分解能な磁気計測に用いられているが、MFMは、針と試料の相互作用に大きく影響されるのに対し、SQUID顕微鏡では、力の影響を全く受けず、磁場のみを検出する特徴がある。今後、スピントロニクスなどに用いられる微細な磁気組織を有する材料研究や、磁気デバイスの研究への応用が期待されている。
物質・材料研究機構の糸崎秀夫ディレクターは「予想以上に高分解能な磁気像を得ることができた。さらに高分解能化研究を進めるが、同時にこの技術の応用展開が楽しみ《とコメントしている。
図2 磁気トナー印字の観察 左:光学顕微鏡像 右SQUID磁気顕微鏡像
(Wildcat)