SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol.12, No.6, Dec. 2003

2. 25T超伝導マグネット実証試験に成功!
 _NHMFL、OI社_


 オックスフォードインスツルメント社(O.I.)、超伝導技術社(Superconducting Technology)及びフロリダ州立大学の研究者グループは、8月23日超伝導マグネットの世界記録を樹立した。Bi-2212テープ線材を巻いたコイルを20T常伝導マグネットのボア−に挿入して、25.04Tの中心磁界を発生させた。超伝導マグネットが25Tに到達したことは今までになかったことである。超伝導コイルで5Tの正味磁界を追加したことも、実用サイズの酸化物マグネットとしての従来記録を凌駕するものである。従来の記録は、日本企業の技術者が保持している。(Superconductor Week誌9月15日, Vol.17, No.9 )

 フロリダ州立大学構内に在る高磁界国立研究所(NHMFL)所長のJ. Crow博士は、「この実証成功は、超伝導マグネットによる高磁界への要求を満たす上での重要な一歩である。これは、約20年間幻に留まっていたものである。国立科学基金(NSF)により高磁界国立研究所へ課された当初の義務の一つは、25T或いはそれ以上で動作する超伝導マグネットを製作することであった」とコメントした。オックスフォードインスツルメント社プロジェクトリーダーのK. Marken博士も「商用NMRスペクトロメータマグネットの稼動磁界をより高くしようとする動因が、この達成のためOI社が投資を継続するよう駆り立てたものである。当社の高磁界ビジネスに於いて実証された技術的優位を利用できるよう期待している」と語った。

 従来の金属系超電導材料でより高い磁界の達成は疑問である、と云うのは従来材料ではこのような環境に於いて臨界電流能力の多くを失うからである。研究者は、長い間高温超伝導材料(HTS)は液体ヘリウム温度で動作させれば、25Tに於いても電流を維持する高磁界超伝導材料であると認識している。それ故、これらの材料はさらに高性能のNMRシステムに向けて一つの解決策を提供するものである。

 上記の記録を作ったコイルは、オックスフォード社が製造した約2kmのBi-2212多芯テープ線材(5mm×0.2mm)を巻いたものである。酸化物超伝導体を商用化する世界的な努力のほとんどは、高温でのその優れた性能の故にBi-2223 及びYBCO線材の開発に集中したが、Bi-2212は依然として低温・高磁界における性能保持者としてとどまっている。オックスフォード社は、同様ないしは良好な性能を有するBi-2212多芯丸線を現在開発中である。多くのコイルは、J. Schwartzが率いるNHMFLチームによって巻線され、組み立てられ、高磁界国立研の孔径200mm、20T常伝導マグネットの中でテストされた。コイル集合体は、3つのセクシヨンからなり、2つのダブルパンケーキとそれを収紊する1つの外層コイルである。38mmのクリアボアーは、商業的に見て実用的サイズである。ダブルパンケーキの外径は、164mmである。

 ニュージャージー州カルトレット市所在のオックスフォード超伝導技術社(OST)は、永年超伝導線及びケーブル製造の開拓者であった。そして現在、Nb-Ti 及びNb3Sn超電導線の先進的製造者として活躍している。OST社の製品は、NMRマグネットやMRIマグネット及びその他多くの強磁界を要する応用に使用されている。同社は、これらの市場で確立されたその地位により酸化物超伝導体の初期の高価値の応用を促進すると期待している。ここで予告された仕事は、技術実証を表している。この技術を高磁界マグネット製品へ取り込んでいく為には、追加的仕事が必要である。

(こゆるぎ)