SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol.12, No.4, Aug. 2003

9.誌上討論 「超電導エレクトロニクスはどこまで進んだか」


 超電導現象の発見から90年以上、高温超電導体の発見からでも15年以上が経過した。超電導現象はいろいろな分野への応用が考えられるが、とりわけエレクトロニクスの分野では、半導体や他の材料を用いたエレクトロニクスでは実現上可能な領域への応用が期待されている。これまでにない新しい分野が開拓されて、人類の福祉に大きく貢献することも考えられる。しかし、従来の技術では実現できない分野というのは、極限的な技術のブレークスルーを要求されるのが常であり、超電導エレクトロニクスは極限技術実現へのチャレンジであるとも言える。

 今号では、このような難しい技術へのチャレンジの最先端を走っている研究者に、技術の現状と将来への夢を語ってもらう。今回エレクトロニクスの分野として取り上げたのは、SQUIDの医療応用、SISミクサの天文応用、超電導薄膜の通信用フィルタへの応用、SFQのディジタル回路応用の4分野である。SFQのディジタル応用は、YBCOなどの高温超電導材料とNbなどの低温超電導材料とで応用分野が異なっているので、二人の専門家にお願いした。コーディネーターには企画・調整・まとめに協力して頂いた。

 今回の誌上討論参加者は、次の方々である(敬称略)。

   SQUID:塚田啓ニ(日立中央研究所)
   HTSフィルタ:岡崎三也(アルプス電気)
   SISミクサ:野口卓(国立天文台)
   SFQ回路(低温): 日高睦夫(超電導工学研究所)
   SFQ回路(高温): 田辺圭一(超電導工学研究所)
   コーディネーター:蓮尾信也(超電導工学研究所)

問1 技術の特徴:従来技術では実現できないどのような技術を開発しようとしているのか? 最も大きな技術の特徴を伺いたい。従来技術と比べて定量的にどの程度の差があるのか?

問2 技術の現状:それぞれの分野の技術のステータスをたずねたい。どの程度(規模、性能、などの特記すべき点)のものが実現されており、どの程度使われているか。まだ、実現されていないとすれば、どのようなユーザをターゲットにしているのか。超電導を使わない競合製品は何か、また、同じ分野の技術を開拓しているのはどこの国か。それぞれについて現在の相手の力量と今後想定される競合について述べて頂きたい。

問3 課題:現在技術を進める上で最も困難な点は何か。人か、物か、金か、あるいは全く別の問題か。この分野で優位な戦いを進めるために、何を最も強化したいか。

問4 これからの夢:今後の夢についてたずねたい。今後当該製品はどのような筋道をたどって発展すると考えているか。途中で新たな競合相手が現れるのか。それらに打ち勝って最後に勝利したイメージはどういう状況か、またそれは今から何年後くらいか。


SQUID:日立中央研究所 塚田啓ニ

問1 技術の特徴:

 SQUIDの医療応用の必然性は、SQUIDの磁気センサとしての高感度特性にあると考える。磁気センサにはいろいろあり、フラックスゲート、ホール素子、磁気抵抗、磁気インピーダンス、等各種センサがある。しかし、現在のところ生体磁気計測で求められている検出感度は数10fT/√Hz以下で、しかも生体磁気の計測周波数帯域としては数100Hz以下の低周波なので、他のセンサではまだ達成していない。最近、光ポンピング方式で成人の心臓磁場が計れたことが報告され、感度が向上しているようだが、まだマルチチャンネルとしてのシステム化や脳磁計測の可能性については実証されてなく、実現するには時間がかかりそうである。特に生体磁気計測においては、脳や心臓から発生している磁場分布解析の空間分解能が必要とされるので、多点計測するためのセンサの信頼性が必要とされる。現在、低温系SQUIDは、完成された製造技術として安定にデバイスを供給できるようになっている。これにより、システムとしては数10チャンネル以上のものでも容易なものとなった。また、高温系についても、まだ量産化は課題となっているが、感度として100fT//√Hzを切るようになり、ようやくマルチチャンネルのシステムが実用化のレベルになってきた。

問2 技術の現状:

 SQUIDの医療応用として、実用化されているものは生体磁気計測装置で、最近その次に実用化されると期待されているものに免疫分析装置がある。生体磁気計測装置については、その測定対象として、脳の神経活動を計測する脳磁計、心臓の心筋活動を計測する心磁計がある。脳磁計に引き続き、心磁計も日本で薬事承認され医療器具として製品化された。脳磁計に関しては、欧米では4-D Neuroimaging(前身は米国BTi社とヘルシンキ大と連携しているNeuromag社)、CTF(カナダ)があり、日本では横河、島津が製品化している。ここで、注目すべきことは、外国メーカー2社による日本における設置台数はすでに30台以上を超えており、世界的にみて設置台数が突出していることと、日本市場を独占した状態に近いことである。しかし、日本の装置も最近では使われ始め今後での普及が期待されている。脳磁計は脳外科、神経内科等の臨床応用の他、脳科学の基礎生理学研究,心理学,認知科学など広い分野で使われている。とくに、脳研究においてPETや、fMRI、脳波計、最近で光トポなどの計測装置があるが、脳磁計は非侵襲的に神経活動を直接計測し時間分解能にすぐれている点が特徴としてあげられる。また、1990年に始まった米国における国家的脳研究に刺激を受けたことから、日本で研究費がかけられ普及した。一方、心磁計は4-D Neuroimaging、CMI(米国)、日立ハイテクノロジーズが製品化しているが、まだ米国では心磁計自体が医療器具として承認されておらず、日立ハイテクノロジーズの心磁計のみが日本で先行した形で承認された。このように心磁計は歴史が古いが、脳磁計のあとから医療機器として使われ始めた。心磁計では、上整脈や虚血性心疾患などによる心筋での電気生理学的活動の異常を画像化し、微妙な変化を捉えることができる特徴がある。とくに、最近では出生前である胎児の心疾患も報告され、従来の超音波検査等ではできない電気生理学的信号を捕らえることができる唯一の検査として認知されるようになってきた。現在、生体磁気計測においては、ドイツ、フィンランド、日本、米国が中心的におこなっているが、韓国、台湾でも活発化してきている。

問3 課題:

 SQUIDを用いた生体磁気計測装置の課題は大きくいって3点あると考える。まずは、装置価格であり、ほかの2つは超伝導特有の問題である冷却系による複雑さと、磁気シールドを含む環境磁気雑音除去だと思う。価格と後者の2点は別の問題でなく、冷却系と磁気シールドが必要なため装置が複雑になり価格も高くなってしまっている。このため、課題は冷却系と環境磁気雑音除去に集約されると考える。とくに、装置が普及したときのことを考えると、現在の液体ヘリウムの補給体制が適用できるか疑問である。このためには、MRIなどでやられているように冷凍機により蒸発量を減らし、液体ヘリウムの補給を年に数回ですませる必要がある。また、高温超伝導SQUIDが期待されているのは、冷媒が液体ヘリウムではなく液体窒素になる点だと思う。液体窒素は取り扱いが数段易しく、すでに病院での検体の保存や、治療として一般的に使われているので、冷却系としてかなり便利なものとなる。また、従来は環境磁気雑音除去のために遮蔽率の高い磁気シールドが使われていたが、現在は簡易な磁気シールドと、センサ方式、回路・信号処理による遮蔽効果との組み合わせが主流となってきているが、さらに磁気シールドを簡易化、小型化する必要があると考える。

問4 これからの夢:

 まだ医療の現場では生体磁気計測は始まったばかりで、これからさらに多くの臨床的有用性が報告されてくると思う。これにより研究者だけでなく、一般の医師からも認知され医療の現場での必須な検査ルーチンになってくることが考えられる。普及と装置価格は裏腹の事で、社会的ニーズが高まり普及することにより技術革新が進み装置価格もかなり低減することができるが、現在装置が高いことから購入できるところが少なく普及できない状況にある。これを打破するには課題で述べたように、もっと簡易な磁気シールドと冷却系のメンテナンスが容易な装置にする必要があり、実現可能と考えている。特に、磁気シールドに関して、すでに高温超伝導の簡易システムで発表したように磁気シールドまでも可搬できる方式や、設置場所への移設と解体が容易な構造にすることは可能である。現在、研究のレベルでは多くの参照用SQUIDを用いた信号処理により磁気シールドなしで計測できることが報告されているが、多くの環境雑音環境下である病院で信頼性のある計測を保証できるかまだ分からない。とくに診断においては、上整脈での突発的な信号か雑音であるかはっきり区別できないと、大変なことになる。しかし、磁気シールドなしにしたい事は、今後の生体磁気計測装置の方向性を示している。10年以内には生体磁気計測装置は普及し、病気になったとき以外でも自分の健康管理として人間ドックや診療所などでも気軽に受けられる状況になっていると考えている。


HTSフィルタ:アルプス電気 岡崎三也

問1 技術の特徴:

 超伝導フィルタの特徴は、多くの共振子を結合して高選択度特性を実現できることにある。この様に多段化することで、比帯域を広くしても減衰特性の傾斜が急峻なフィルタを実現できる。このフィルタを複数個並べ、ガードバンドがほとんど上要なフィルタバンクを実現できると考える。

 一方、比帯域が極めて狭いフィルタを実現することもできる。この特性を活かして超狭帯域のフィルタを数百から数千以上並べたフィルタバンクが実現できると考えられる。

 いずれの場合でも広範囲のスプリアス特性ですぐれているという特徴がある。これは従来技術と比べて極めて小さい容積(千分の一以下)で大きな無負荷Q(数十倊以上)が得られる共振子を多段化した構成によって得られるものである。今後、広帯域フィルタバンクを開発するにあたり有害なスプリアス共振が無いということは大きな特徴となり得る。

 従来技術と比べた超伝導フィルタの特徴は、広帯域特性と急峻な減衰特性と広範囲のスプリアス特性と低搊失のすべてを満足することにある。我々が実現したフィルタの例では、従来技術のフィルタに比べて超伝導フィルタの減衰特性急峻度(シャープスカート性:50dBの減衰を得るのに必要な離調周波数)は15分の1であった。また、広範囲のスプリアス特性は106分の1~1010分の1(-60dB~-100dB)であった。

問2 技術の現状:

 現在の技術で実現した超伝導フィルタ装置の一例を示す。    2GHz帯フィルタ    共振器数  24段    基板サイズ 2インチφ(MgO基板、YBCO薄膜)    通過帯域幅       20MHz     シャープスカート性   50dB/MHz以上    スプリアス特性     -130dB以下 (1~3GHz)  上記フィルタは、干渉電波観測用として使用されている。また、電波天文用として陸上通信からの電波干渉を避ける目的で、より広帯域のフィルタ装置が使用されている。米国では携帯電話基地局の一部で干渉雑音あるいは熱雑音低減をターゲットに使用されている。  10年前は数段に過ぎなかったフィルタは32段まで実現できるようになった。この多段フィルタは、共振子を直線配列から円周上に配列することにより共振子相互の疎結合を可能として小型化を実現し、またパターン形成工程での周波数調整も容易となり、特性の再現性が改善された結果、組み立て後の調整を上要としている。更に冷却システムの進歩としては、小型パルス管冷凍機の開発による信頼性の向上、低熱流入で低搊失の極低温接続ケーブルの開発、極低温低雑音増幅器の開発など、周辺技術においても実用的な状況にあると考えられる。諸外国においては、米国では多数のフィルタを同一パッケージに収紊し、超小型冷凍機で冷却する携帯電話基地局用の装置が開発されている。また、欧州では技術開発はほぼやり尽くしたとの認識で、フィルタの新たな研究開発は休止状態である。現在、日本で開発された超伝導フィルタが総合特性において最も優れているものと認識している。  しかしながら、携帯電話基地局を含む通信システムのフィルタニーズは電気特性ではなく、小型、低価格に向かっており、現在実現できているフィルタ装置(冷却装置を含む)の重量、サイズ、価格を数10分の1にして競合製品と同等程度と思われる。この分野では今後も小型、低価格のトレンドの上で競争することになろう。 問3 課題:

 通信市場のトレンドは、超伝導フィルタが得意とする電気特性の向上には向かっていないように見える。通信品質に関する多くの課題はデジタル信号処理で解決し、パッシブデバイスへの依存を減らして小型、軽量、低価格を目指す流れが大勢を占めている。このような環境下において、既存のパッシブデバイスを前提として構築されたシステムへの置換えでは、製品の市場化は極めて困難であると言わざるを得ない。  超伝導フィルタが、これまで誰も経験したことがない電気特性を実現できることはすでに実証済みである。デバイスのアプリケーションにおいてイノベーションを起こし、新しいシステムをいかにして開発し、市場を形成することが出来るかどうかが最も大きな課題であろう。  昨今、市場性の見通しを示せない研究開発は切り捨てる風潮が蔓延し、金も人も集めるのは大変難しいといった現実がある。極めて優れた特性を持ったものといえども容易には受け入れられないのは世の常である。デバイスの研究開発に携わるものにとってアプリケーション開発は専門外ではあるが、たとえ困難であっても将来に希望をもって挑戦する以外にない。  技術開発の課題としては、フィルタバンクを実現するためのフィルタ回路の小型化、同一基板上に異なった周波数のフィルタを複数個搭載し信号を分配する技術、分配された出力信号の信号処理方式などがある。 問4 これからの夢:

   超伝導フィルタの技術は既存技術の置換えではなく、顕在化している通信システムトレンドに迎合することなく、新しい価値観を持った通信システムを実現できる可能性がある。現在の技術トレンドでは、電波利用による利便性の追求と電子機器の普及による人工雑音の急激な増加が懸念される。その事によって電磁環境の急激な悪化を招く恐れがある。理想的なフィルタ特性を生かすことで、人と地球にやさしい電磁環境を作りたい。  受信システムのフィルタバンクは、自然雑音に埋もれた信号を拾い出し、上要な帯域の雑音や上要な信号を抑圧して高品質の復調を実現する。高感度の受信機に対して、送信信号は所定帯域以外の上要輻射を出さず、最小の送信電力を通信の相手に対してのみ発射する。上要な電波雑音を減らすことで静かな電磁環境を実現し、人体へ輻射する電波の量を減らし、地球規模で使用するエネルギーを低減し、地球や宇宙環境の正確な診断も可能とすることを期待する。


SISミクサ:国立天文台 野口卓

問1 技術の特徴:

 宇宙電波のような極微少電磁波を効率よく観測するには、観測システムの内部雑音(あるいはその等価雑音温度)をできるだけ低く抑えることが重要となる。そのためには、検出器の内部雑音も小さく抑える必要があり、検出器を設計するにあたっては、あらゆる付加的な雑音要因を厳しく抑制することが求められる。

 SISミクサは、ミリ波、サブミリ波帯において動作する、内部雑音が極めて低い検出器である。これまで、大部分のミクサ素子には、Nb/AlOx/Nb接合が利用されているが、Nbのギャップ周波数(約700 GHz)以下では、SISミクサの雑音温度は、量子雑音hn/kB (kB : ボルツマン定数、h: プランク定数、n:周波数)の3倊程度というきわめて低い値を実現できることが明らかになっている。他の競合デバイスとしては、100 GHz帯以下では冷却HEMTデバイスが、それ以上の周波数ではGaAs系冷却ショットキミクサがあげられるが、雑音温度的には、SISミクサの2~5倊程度の性能しか実現できていない。

 また、SISミクサは、100 GHz帯で数十nW程度の非常に小さなLO電力で駆動できる。SISミクサを駆動するために必要なLO電力は、周波数の2乗に比例して増加するが、1000 GHz帯でも数mW程度と非常に小さい。この値は半導体ダイオードミクサの駆動に必要なLO電力の約1000分の1以下であり、例えばガンダイオードと周波数逓倊器の組合わせで十分供給可能な電力である。LO電力という観点からみても、SISミクサは、コンパクトで強力な発振器が入手し難いサブミリ波帯では、非常に魅力的なミクサである。

問2 技術の現状:

 現在、SIS受信機は、国立天文台野辺山宇宙電波観測所45m電波望遠鏡をはじめとした世界各地のミリ波帯電波望遠鏡で、ショットキミクサ受信機に代わって搭載され、ミリ波帯宇宙電波の高感度・高分解能観測を進め、星間分子、原始星・原始惑星系の形成、銀河系・系外銀河における星形成などに多くの研究成果を上げている。さらに最近では、JCMT (James Clerk Maxwell Telescope) 15m鏡やCSO (Caltech Submillimeter Observatory) 10m鏡などでは、サブミリ波帯SIS受信機を用いた500GHz帯、800GHz帯などのサブミリ波観測が本格的に行われるようになってきている。我が国においても、サブミリ波帯SIS受信機は、東京大学の富士山頂望遠鏡や南米チリのアタカマ高地に設置した大学共同運用サブミリ波望遠鏡などに搭載され、これまで未開拓であった500~800GHz帯のサブミリ波による天体観測を開始している。

 さらに、昨年度から、欧米共同で標高4,500mのアタカマ砂漠の高原に、ミリ波、サブミリ波の大型電波干渉計(Atacama Large Millimeter/Submillimeter Array; ALMA)の建設が2010年の完成に向けて開始されている。ALMAでは、64台のアンテナが、最大14kmの範囲に配置され、口径14km相当の巨大な電波望遠鏡を合成するもので、ハッブル宇宙望遠鏡を凌ぐ0.01秒角という空間分解能と、口径100 mの望遠鏡に相当する集光力をもつ究極の地上電波望遠鏡と考えられている。ALMAの各アンテナには30から950 GHzにわたって、合計10の観測周波数帯が想定されている。この中で、低周波側の2バンドを除く100 GHz以上の8つの周波数帯の受信機には、SIS 受信機が搭載されることになっている。

 ALMA計画では、日本を中心として、コンパクトアレイ(ACA)と呼ばれる、小口径のアンテナ10台を同時に建設することになっており、これらのアンテナにも先の64台のアンテナの場合と同様、8バンドの受信機システムが搭載されることになっている。したがって、ALMA計画では、600台を越える数のSIS受信機が使用される予定であり、両偏波同時観測や単側帯波(シングルサイドバンド)化などを考慮すると、約2,000個のSISミクサが必要となると予想されている。現在の計画では、これらのSISミクサを日、米、欧の大学、研究所、電波天文台などで担当バンドを分担して製造することになっている。ALMA計画に関する詳しい情報は、http://www.nro.nao.ac.jp/%7Elmsa/index.htmlに掲載されている。

 また、数年後には、欧州宇宙機構により世界初のサブミリ波観測衛星(ハーシェル)が打ち上げられることになっており、現在、欧米の幾つかの研究機関において、それに搭載される500~2000GHzにわたる幾つかのSIS受信機およびHEB(超伝導ホットエレクトロンボロメータ)ミクサ受信機の開発が行われている。我が国においては、国際宇宙ステーションの日本実験モジュール(JEM)に搭載する大気観測用サブミリ波リムサウンダのフロントエンドとして、640GHz帯のSIS受信機の開発がNASDAを中心に行われている。

 欧米の研究機関では、次世代の宇宙電波や大気観測システムのフロントエンドとして1~5 Thz帯のHEBミクサの開発を開始している。これらの開発では、超伝導HEB素子の開発だけでなく、アンテナを含めた入力光学系や信号整合回路の設計なども重要な課題となるため、システム指向の研究開発体制の確立が重要であると考えている。

問3 課題:

 現在の日本における超伝導デバイス自体の研究レベルは、他の国に比べて高いと考えられ、人材的にも財政的にもかなり恵まれた状況にあるものと考えている。しかし、超伝導の応用研究、例えば、サブミリ波SISミクサやHEBミクサの開発といった研究分野では、欧米に大きく遅れをとってしまっているのが現状である。その要因には、これらの応用研究が大きな産業上の成果を生むほどの魅力的なテーマではないということがよく第一にあげられるが、これは、欧米においてもいえることであり、本質的な説明にはなっていない。欧米の研究開発の進め方をみると、薄膜を含むデバイスの開発研究とデバイスの応用研究は独立の研究グループが行う分業体制が確立されており、それらをコーディネートする個人あるいはグループによって一つの研究開発プロジェクトとして遂行されている。日本における超伝導デバイス関連の研究開発も、デバイスを供給するファウンドリ的な役割の研究機関やグループを育成し、デバイスの応用研究を主とするグループあるいは超伝導以外の研究分野のグループとの協力を可能にするプロジェクト指向の開発研究体制を構築していく必要があると考えている。

問4 これからの夢:

 宇宙電波をはじめとするミリ波、サブミリ波帯の極微弱電磁波の高感度検出においては、SISミクサや超伝導ホットエレクトロンボロメータミクサは、少なくとも今後10年は優位性を保持し続けるものと考えられる。その間、HEMTデバイスやショットキダイオードの高周波化や低雑音化も進行するものと予想されるが、超伝導デバイスに対しても更なる低雑音化、高周波化がはかられ、超伝導デバイスの優位性が維持されると考えている。

 さらに将来的には、1THz以上の周波数帯で動作するSISミクサやHEBミクサ素子の開発が大きな開発課題となると考えられ、この周波数帯で低搊失なギャップ周波数の大きな、すなわち転移温度の高い超伝導薄膜の開発やそれを用いたSIS接合(超伝導トンネル接合)の開発などが主要研究テーマとなると考えられる。この周波数領域では、半導体系の量子効果デバイスなども高性能検出器として期待されており、必ずしも超伝導デバイスの優位性が維持できる訳ではないと考えられる。1THz以上の周波数帯で超伝導デバイスの優位性を保持するためには、SISミクサやHEBミクサとは異なる、高温超伝導体とそれを利用した高性能デバイスの開発などの新しい局面の開拓が必要になってくるものと考えている。


SFQ回路(低温):超電導工学研究所 日高睦夫

問1 技術の特徴:

 低温超電導体ニオブを用いたSFQ回路のアピールすべき一番の特徴は、超高速で動作する大規模集積回路(LSI)が実現できることであると思われる。単体のゲートレベルでは、半導体でもSFQゲートに匹敵する速度のものが存在する。しかし、このような半導体ゲートは消費電力が大きく、発熱の問題から高密度に集積することは上可能である。これに対して、SFQパルスの大きさは1mV以下であり、半導体の動作電圧に比べて3桁以上小さいため、SFQ回路は高速で動作しても消費電力が極めて小さく、集積化しても熱の問題が発生しない。このため、SFQ回路では超高速ゲートを高密度に集積でき、100GHz以上のクロックで動作するLSIも可能である。

 処理すべきデータの入力レートがLSIのクロックを上回る場合、回路を並列化して処理が行われる。このような並列処理は素子数の増大を招き、発熱の問題が大きくなる。発熱の問題を避けるために回路を多チップに分け分散して配置すれば、チップ間の実装が複雑になる。半導体ではこのような発熱と実装の複雑さが性能限界を規定する処理が数多くある。その代表的な例が光ファイバーから入力するパケットデータの交換を行うネットワークルータである。このような応用に高速のSFQ LSIが有効に使えるものと期待されている。

問2 技術の現状:

 低温SFQ回路では、5000接合規模の回路を20GHzクロックで動かすことは問題なくできるようになってきている。しかし実際に役立つものを作るためには、この集積度を一桁向上する必要がある。現在、NEDOの「低消費電力型超電導ネットワークデバイスの開発」プロジェクトにおいて、5万接合級のSFQ LSIをターゲットにプロセス技術、設計技術の開発を行っている。このプロジェクトはSFQサーバ、ルータの基盤技術開発を目的としており、それぞれ20GHzクロックのプロセッサモジュール、1.0Tbpsスループットのスイッチモジュールを開発する計画である。

 我が国において低温超電導デジタル回路は、半導体と同じレベル論理を用いたラッチング回路と呼ばれる回路方式を用いて80年代初頭から研究が始められた。しかし、大規模ラッチング回路に必要な大電流の交流をチップに供給する難しさが主な理由となって、半導体を大きく上回るクロックで動作させることは困難であることが明らかになってきた。そこで、情報媒体にSFQを用いたパルス論理回路であるSFQ回路に回路方式を変更して97年から研究をリスタートさせた。現在我々は設計を吊大、横国大、通総研、NEC(現SRL)からなるCONNECTと呼ばれるグループで共同開発し、プロセスをNEC(現SRL)に集約することによって、効率的な研究開発を行っている。

 アメリカでは軍関係の予算により研究が進められており、ADコンバータ等の信号処理回路で先行している。日本と同じようなプロセッサ、スイッチを目指した研究も行われているが、我々を上回るような回路動作の報告はない。アメリカは個々の設計者がそれぞれの流儀で設計しているのに対して、日本では共通の設計環境を構築し、共同して問題解決に当たっている。また、「NECスタンダードプロセス」と呼ばれる標準プロセスの信頼性も高い。これらの差が実際に動く回路の違いになって現れているのではないかと思われる。一方、Hypres社を中心にアメリカは実装やシステム化技術で先行しており、我々も早急にこの分野の技術を立ち上げる必要がある。ヨーロッパはドイツのIPHTに6インチのプロセスラインを作り電圧標準回路で実績を上げているが、SFQ回路への取り組みは遅れている。また、韓国にもSFQ回路を目指したニオブプロセスラインが導入された。  我々のメインターゲットであるルータ用スイッチ回路を例に取ると、市販されている半導体スイッチの最高スループットは320Gbpsである。発熱と実装の複雑さから半導体スイッチは1Tbpsが限界だと言われている。一方、2010年に必要となるハイエンドルータのスループットは20Tbpsに達すると予想されており、このスループットを持つルータを開発するには、SFQ技術が上可欠であると考えられる。また、2010年頃には光ルータを開発するという計画があるが、光集積回路で複雑な制御部分を作ることはできないので、この光ルータ制御部には電気回路が必要となる。ところが、高速の光ルータ速度に対応するのは半導体回路では無理で、SFQと光のハイブリッド回路が注目を集めている。

問3 課題:

 SFQ回路が世の中に出て行くためには、回路を動作温度に冷却するための手間がユーザーの許容範囲内にあることと、SFQ回路内と同程度の高速信号を室温から入力し室温に出力することが上可欠である。5万接合級のSFQ LSIを実現するための設計、プロセス技術の目途は付きつつあるが、冷凍技術、インターフェイス技術、実装技術などのシステム化技術は遅れていると言わざるを得ない。急速にシステム化技術を立ち上げ、世の中にSFQは“使える”技術であることを認知してもらい、開発資金をこの分野に注入してもらうことが重要である。一方、システム化技術開発には、多くの資金が必要である。資金を出してもらうにはシステム化開発が必要だが、資金がなければシステム化開発はできない。この矛盾した状況を克朊し、有効なデモンストレーションを行うことが求められている。

問4 これからの夢:

 低温SFQ回路の最初の本格的な製品としてネットワークルータを考えている。2006年度までに32×32スイッチモジュールのデモンストレーションを行う予定である。これは1枚のボードで現在の最速半導体ルータの3倊以上のスループットを持つ。ネットワークルータはパケットの前処理を行うラインカードとパケットの交換を行うスイッチカードから構成される。高度情報化社会の進展にともないスイッチカードに要求されるスループットは年々上昇しており、2010年には半導体スイッチカード限界の20倊の処理能力が必要になると言われている。一方、ラインカードは複雑な処理を行うプロセッサであるが比較的低速処理が可能なので、半導体でも対応可能である。2007年度から3年程度かけて半導体ラインカードとのインターフェイスを開発する。この開発により、ラインカードから見てSFQスイッチカードを一種のブラックボックスにしてしまい、能力の高いSFQ回路をネットワークルータのシステム専門家が使えるようにする。ラインカードや制御用ソフトウエア開発には膨大なリソースが必要であり我々にはとても対応できないが、この戦略をとることによってラインカードやソフトウエアは半導体ルータのものがそのまま使えるので、SFQスイッチを核とした高スループットルータを実現することができる。実際にSFQルータが市場に投入されるのは2010年頃を予想している。最初は特に高いスループットが必要な特殊なルータに限られると思うが、SFQ技術の有用さが実証されるにつれ裾野が広がっていくものと思われる。これとともにSFQプロセッサなどの他の応用にも道が拓けていくものと期待している。


SFQ回路(高温):超電導工学研究所 田辺圭一

問1 技術の特徴:

 SFQ回路の一般的な特徴は、100GHz以上のクロックで動作する超高速・低消費電力の集積回路が実現できることである。一方、低温SFQ回路と比較した場合、高温SFQ回路は、材料・プロセスが複雑なため大規模集積回路を作ることは困難であるが、コンパクトなクーラーが使用できる高温で回路を動作できることが最大の利点と考えられる。したがって、高温SFQ回路の当面のターゲットとして期待されるのは、超高速計測機器やアナログデジタル(AD)変換回路のようなmixed signal(高周波アナログ信号及びデジタル信号の両方を扱う)デバイスを中心とする小中規模信号処理システムである。

 ジョセフソン接合を用いた高温超電導信号処理回路の場合、ビット誤り率を低くする必要があるため、実際の動作温度は50K以下となる。SFQ回路の動作速度は、ジョセフソン接合のIcRn積(Ic:臨界電流値、Rn:接合の常伝導抵抗)に比例する。高温超電導ジョセフソン接合のIcRn積は40Kにおいても1mV程度であるため、SFQパルス幅は2 psとなりフリップフロップ回路レベルで250GHz程度のクロック動作が十分可能である。一方、現状の最高速あるいは広帯域のmixed signalデバイスには化合物半導体デバイスが用いられている。化合物半導体トランジスタ単体の動作速度はSFQと同程度になってきているが、フリップフロップ回路レベルでの速度は最高で80GHz程度であり、高温SFQ回路は速度に関し2、3倊の優位性があると言える。また、例えば低ロス・高バンド選択性の特徴をもつ超電導マイクロ波フィルターと超電導AD変換回路を組み合わせることにより、ミキサーなどのアナログ部品を使わない基地局受信機など革新的な無線通信システムが構築できるという期待がある。 問2 技術の現状:

 高温SFQ回路における最大の課題は、集積回路構築に上可欠な特性のそろったジョセフソン接合や薄膜多層構造などを作製するプロセス技術の確立である。国内では、98年に始まり本年3月に終了したNEDOの「超電導応用基盤技術研究開発」プロジェクトにおいて、高温SFQ回路のための基盤技術開発がSRLと日立、東芝、NEC、富士通、三菱電機等により行われ、グランドプレーンを含む超電導層3層、絶縁層2層の薄膜積層構造(表面平坦性と低シートインダクタンスが要求条件)の作製技術が確立している。また、接合に関しては、界面改質バリアを有するランプエッジ接合の作製プロセスの改善により、臨界電流Icの標準偏差が5-8 %程度にまで低減されている。SFQ回路では、AD変換回路用の基本要素回路など接合を25個程度含む回路の100GHz高速動作実証がなされている。03年度からは、NEDOの「低消費電力型超電導ネットワークデバイス開発」プロジェクトにおいて、シグマ‐デルタ型AD変換回路の動作実証や超電導サンプラーシステムによる100GHz信号波形の計測を目標とし、500接合規模の高温SFQ回路の動作を可能とするプロセス技術、回路設計技術の開発、また回路の小型クーラー実装や100GHz信号のSFQ回路への入力を可能とする実装技術の開発が行われている。我々のターゲットとするシグマ‐デルタ型AD変換回路は、アナログ信号の帯域よりはるかに高い周波数でサンプリングを行う(オーバーサンプリング)ことにより高精度の変換が可能になる方式で、SFQ回路の高速性を利用することにより、第4世代以降の無線通信基地局に必要とされるが現状の半導体技術の延長では困難な広帯域・高精度(例えば100MHz帯域で14ビット精度)の性能を実現することが期待できる。また100GHz帯域サンプラーシステムは次世代高速光通信(40 Gbps以上)用のデバイス開発の基盤となるものである。

 アメリカでは90年代後半に、高温SFQ回路や接合技術の研究開発が活発に行われていたが、現在はNorthrop Grumman社がレーダー用のAD変換回路や波形生成回路の開発を少人数で行っているのみである。アメリカでのSFQ回路開発は軍事応用が主であり、動作温度が低くても高性能性を実証することに主眼が置かれている。例えば、Hypres社は最近8M$の資金を得て、低温SFQ回路によるシグマ‐デルタ型AD変換回路の開発を本格的に進めている。一方、欧州では、無線通信用のシグマ‐デルタAD変換回路を目標とするEUのSUPER-ADCプロジェクトが進行中で、回路規模が小さいが最も高速性が要求される高温SFQによる変調器回路の開発をTwente大が担当している(後段の信号処理回路は化合物半導体による)。現状では、優れた接合技術と大規模なプロセスを維持している点において、我が国が高温SFQ回路の分野では優位に立っていると言える。

問3 課題:

 高温SFQ回路の最大の課題は、プロセスの信頼性向上である。高温超電導薄膜や酸化物絶縁体薄膜の表面平坦性や結晶性は基板温度などの成膜条件に非常に敏感であり、これを最適条件で5層積層する技術は、可能であることが実証はされているものの現状では吊人芸の域を脱していない。ノウハウ、経験をもった研究者を集約すると共に、ポイントを抽出しマニュアル化することが信頼性向上には上可欠と考える。また、高温回路に特有の熱雑音やパラメータばらつきに対し許容度の高いSFQ要素回路を考案していくことも回路規模拡大には必要である。このような多くの課題がある中で、研究開発を継続し製品の実用化につなげるためには、規模のできるだけ小さなシステム(例えばサンプラーなどの計測機器)から高温SFQが実際に使えるものであることを早期に実証していくことが重要と考えている。また、mixed signalデバイスでは高周波実装技術がその性能を左右するため、低温環境にあるSFQ回路に高周波信号を導入する技術がもう一つの大きな開発課題となる。これらの課題を、限られた資金や人員のリソースを効率よく使い、プロジェクト終了までの4年間でクリアすることが高温SFQ回路の実用化への鍵となる。

問4 これからの夢:

 高温SFQ回路の最初の製品としては、上に述べた超電導サンプラーシステムを考えている。2006年度までに現状で最も高性能の半導体サンプリングオシロスコープの帯域(電気信号で70GHz、光入力では55GHz)を超える100GHzの電気信号及び光信号の波形計測を実証する。性能に加えクーラーへのコンパクトな実装が可能なことを示せれば、その後2年以内の製品化が期待できる。一方、プロセスの信頼性を向上させプロジェクトの目標である500接合規模SFQ回路の動作が可能になれば、デマルチプレクサ(DEMUX)や多チャンネルのインターフェイス回路など超高速SFQ回路の信号を室温の半導体回路に受け渡すというシステム構築に必須の技術課題が解決できる。2006年度までに、AD変換回路の要素回路である変調器、DEMUX、インターフェイスの高速動作を実証し、その後通信仕様の広帯域・高精度AD変換回路と超電導フィルターを含む受信機モジュールの開発段階に移行し、2010年までに製品化に結びつけたい。また、高温超電導接合・SFQ回路集積化技術、インターフェイス技術、高周波実装技術の確立により、例えば交流電圧標準・波形シンセサイザ、リアルタイムオシロなどの製品や新たな高性能信号処理システムの実現への道が大きく開けることを期待している。


コーディネーター:超電導工学研究所 蓮尾信也

 以上のように、超電導エレクトロニクスの分野として、SQUIDの医療応用、SISミクサの天文応用、超電導薄膜の通信用フィルタへの応用、SFQのディジタル回路応用を取り上げ、「特徴」、「現状」、「課題」、「夢」について語ってもらった。それぞれの状況がお分かりいただけたものと思う。とくに、「夢」の部分をお読みいただけばわかるように、超電導エレクトロニクスは、必ずしも従来エレクトロニクスの性能を超えたものを目指しているだけではなく、これまで実現できていない機能を実現させようという意図が読み取れる。新しい地球環境すら実現できるかもしれない。少し大げさに言えば、超電導エレクトロニクスは未踏高性能システム実現への挑戦であり、新しいエレクトロニクス創造へ向けた歴史への挑戦であるといえる。

 超電導エレクトロニクスという言葉が生まれてから30年以上経過した。年月を重ねた割にはビジネスに結びついたものが少ないという印象を与えているかもしれない。しかし、これは研究開発に携わる者がビジネスのことをなおざりにしたからでは決してない。むしろ、研究開発者が自ら顧客のところへ足を運んで現在の状況を勝ち得たものが多い。にもかかわらず、まだ大きな市場開拓が出来ていないのは、これまでにない全く新しいシステムを世の中に認知してもらおうとしているからである。単なる部分的なリプレースではなく、トータルシステムのリプレースを行うのが超電導デバイスを用いたシステムの宿命である。このため、「死の谷」は深く、「ダーウィンの海」は広い(注)。いま超電導エレクトロニクスの各分野をみると、SFQのディジタル応用はルータやサンプリングオシロスコープなどのプロトタイプ実現に向けて「死の谷」を渡ろうとしており、フィルタやSQUIDは顧客の獲得を目指してコストダウンという大きな「ダーウィンの海」を越えようとしている段階である。これらが成功するか否かは、顧客をどれだけ満足させられるシステムを作れるかに掛かっている。研究開発者の資質のみならず、研究開発企業の戦略、国の支援、など多くの要因がうまくベクトル合成される必要があると考えている。SISミクサの天文応用に関しては、「死の谷」や「ダーウィンの海」とは関係なく、宇宙の真理を解明する手段の一つとして、今後も大きな威力を発揮し続けるだろう。

   注)「死の谷」:アイデアあるいは基礎研究の段階から、実際にその性能を実証できるプロトタイプ実現までには多くの難関があり、この難関のことを「死の谷」とよんでいる。「ダーウィンの海」:「死の谷」を越えてプロトタイプが実現できても、それが本格的に製品化されて量産体制に至るまでには多くの難関がある。この難関は「ダーウィンの海」とよばれている。