製紙工場では工程で大量の水を使用しており、それとほぼ同量の廃水を出しているが、環境保全への意識が高まるにつれて排出基準が強化される傾向にあるため、その廃水処理に対して高度の技術を導入する必要が出てきていた。特に再生紙製造工場などは再生ルートの確保のため都市近郊に立地しており、必然的に厳しい廃水の排出基準が設定されているのが現状である。このような状況にあるのは、製紙工場だけに留まらず、食品工場など様々な都市近郊立地型工場に共通の課題であることから、水資源の有効利用の期待も込めて、このプロジェクトの進展に大きな期待がかけられていた。
本プロジェクトで担磁プロセスを担当している大阪大学大学院の武田真一氏は、「現在、磁気分離の前処理法のひとつであるコロイド化学的担磁法にさらに工夫を加えたので、処理水をリサイクルできるゼロエミッション型の処理システムも夢ではない段階にまで来ている。さらに今秋からは、大量処理システム(処理量500t/日)の長期実証試験が実施されるので、実用化研究もますます本格化され、実用スケールでのゼロエミッション型磁気分離システムが都市近郊の工場で稼動する日も間近である」とコメントしている。
(久しぶりの関西人)