SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol.12, No.4, Aug. 2003

4.実用化を間近に控えた磁気分離応用*製紙廃水処理への応用
_大阪大学、京都工繊大学、二葉商事_


 大阪大学大学院工学研究科の西嶋茂宏教授および武田真一助手、京都工芸繊維大学物質工学科の中平敦助教授の大学グループと二葉商事による産学共同研究体は、新エネルギー・産業技術総合開発機構の基盤技術研究促進事業の試験研究プロジェクト「超伝導磁気分離を利用した製紙工場からの廃水処理システム」を約2年前より進めてきた。今春、廃水処理量50t/日の試験機(図1)が完成され、さらに今夏にはこの試験機で得られたデータを元にスケールアップを図った実機(廃水処理量500t/日)も工場に設置され、実証試験が開始されそうだ。

 製紙工場では工程で大量の水を使用しており、それとほぼ同量の廃水を出しているが、環境保全への意識が高まるにつれて排出基準が強化される傾向にあるため、その廃水処理に対して高度の技術を導入する必要が出てきていた。特に再生紙製造工場などは再生ルートの確保のため都市近郊に立地しており、必然的に厳しい廃水の排出基準が設定されているのが現状である。このような状況にあるのは、製紙工場だけに留まらず、食品工場など様々な都市近郊立地型工場に共通の課題であることから、水資源の有効利用の期待も込めて、このプロジェクトの進展に大きな期待がかけられていた。

 本プロジェクトで担磁プロセスを担当している大阪大学大学院の武田真一氏は、「現在、磁気分離の前処理法のひとつであるコロイド化学的担磁法にさらに工夫を加えたので、処理水をリサイクルできるゼロエミッション型の処理システムも夢ではない段階にまで来ている。さらに今秋からは、大量処理システム(処理量500t/日)の長期実証試験が実施されるので、実用化研究もますます本格化され、実用スケールでのゼロエミッション型磁気分離システムが都市近郊の工場で稼動する日も間近である」とコメントしている。


図1 廃水処理量50t/日の製紙廃水処理用磁気分離試験機

               

(久しぶりの関西人)