SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol.12, No.4, Aug. 2003

1. 米社とビスマス系線材の特許クロスライセンス契約を結びケーブル分野での協業を推進
_住友電気工業_


 住友電工は、高温超電導(HTS)分野において、米国のアメリカンスーパーコンダクター社(AMSC社)と特許のクロスライセンス契約を結ぶとともに、北米におけるHTSケーブルで協業を進めることに合意したと発表した。

 住友電工は、米国での高温超電導ケーブルビジネスへの足がかりとして、昨年11月より米国ニューヨーク州の州都であるオールバニー市における、HTSケーブルのデモンストレーションプロジェクトに参画しており(本紙Vol.11、No.6、2002.12、通巻60で既報)、このプロジェクトではこれまでに決まっていたニューヨーク州のファンドに加えて、最近になって米国エネルギー省のファンドが付くことが確定した。さらに今回、AMSC社と、北米・欧州を中心に両社がそれぞれ所有しているHTS線材に関する特許をクロスライセンスするとともに、北米におけるHTSケーブルの協業を進めることに合意した。この合意により、HTSケーブルの実用化がさらに進むものと考えられる。

 住友電工では1986年にHTS材料が発見されてから、エネルギーやエレクトロニクスの分野でこの材料が革新的な働きをするとの考えに立ち、HTS材料の線材化や薄膜化の開発を進めてきた。今回、AMSC社とクロスライセンスを結ぶ特許は、材料の中でもビスマス系と呼ばれるBi-Sr-Ca-Cu-O系の材料を用いた線材に関するもので、この線材を用いた実規模の機器デモンストレーションを世界的に行う際の協力関係を強めていくこととしている。住友電工とAMSC社はこの線材に関する特許を世界的に多数保有しており、HTSの実用化をさらに推し進めるという観点から、今回のクロスライセンスに至ったものである。なお契約内容の詳細については両社とも公開を控えている。

 一方、米国では都市部を中心に、電力消費の増加、送電設備の老朽化等により送配電設備が上足しており、それを増強し、電力系統の信頼性を向上させることが急務となっている。このため最近になって米国エネルギー省内に、老朽化した米国電力系統の問題を扱うOffice of Electric Transmission and Distributionが設置され、国家的見地から超電導ケーブルの導入検討が始まっている。このように、特に北米でHTSケーブルの早期実用化が見込まれており、昨年協力契約を締結したSuperPower社に次ぎ、AMSC社とも協業を開始することにしたもの。

 「住友電工とAMSC社はこれまで長年にわたりビスマス系超電導線材の長尺化、量産化技術で凌ぎを削ってきたが、双方の特許をクロスライセンスすることで、特に超電導ケーブルを中心に大きなマーケットが開けると期待される北米市場において、実用化の動きがこれまで以上に加速されるものと期待している」と住友電工エネルギー環境技術研究所超電導研究部の林和彦部長はコメントしている。

(HTS)