SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol.12, No.3, Jun. 2003

9. STI社がISCO社との特許侵害裁判で勝訴


 2001年7月、ISCO International,Inc.(ISCO)がSuperconductor Technologies Inc.(STI)とその子会社のConductus,Inc.を相手取り、同社の特許侵害訴訟を提訴して以来関係会社間で激しい係争が続いていた。最近では、ISCO社がSTI社及びConductus社の顧客に有償の実施権許諾を要求するまでにエスカレートし、STI社及びConductus社が連合して対抗するという図式になっている。漸く立ち上がりつつ有るHTSフィルター分野の将来展望に影を投げかけるものであり、関係者は大きな関心を持って当係争の行方を見守っていた。

 この度4月3日付の新聞発表で、無線及びデータ通信用高温超伝導(HTS)製品の世界的リーダーのSTI社は、ISCO 社よりDelaware地方裁判所に申し立てていた特許侵害提訴に対して、陪審委員会が却下の審決を下したことを明らかにした。陪審委員会は、移動体通信システム向け極低温冷却式前置端末型受信器に関する米国特許No.6,263,215号が無効で実施上能である、との評決を満場一致で行った。更に陪審委員会は、ISCO社が非公正な競合を図り、新聞発表を使って“悪意の行動”を行い、STI社の顧客に対して215号特許による営業妨害の事実に基き、ISCO 社がSTI社に3.8Mドルの搊害賠償を支払う決定をした。STI社社長のM.Peter Thomas氏は、「215号特許は無効であると言うのが我々の確信であった。裁判の結果を喜んでおり、すぐ通常のビジネスに戻れることを心待ちにしている」と語った (http://www.suptech.com/PRNewswire,April3/)。

 STI社(本社はキヤリホニア州サンタ・バーバラ市に置かれている)は、1992年の会社設立以来一貫して無線通信ネットワーク向け超伝導製品を開発・製造し、国際的に販路を拡げてきており、いまや世界的リーダーといえる存在である。STI社のSuperLink製品群は、容量利用度向上、通話脱落・遮断の低減に役立つことが実証され、さらに覆範区域の拡大及び無線通信の速度を速めることが可能になっている。同社代表製品SuperLink製品系列の一つであるSuperFilterRxは、自社特許のHTS技術を組み込んでおり、無線通信運用業者が資本及び運転コストを抑えながら、通信ネットワークの性能向上を狙って多く使用する低温冷却前置型受信器である。最近の新聞発表によれば、2000台以上のSuperFilterが既に世界市場に出荷されており、実地で稼動している全システムの延べ運転時間は2500万時間に達したという。

 2002年、STI社はロスアンジェルス地域の“急成長ハイテク企業50社”(Deloitte&Touche’Technology Fast 50Companies)の1社に指吊されている。上記の勝訴により、特許侵害係争の制約が取り払われ、積極的な営業展開が可能となったので、今後同社の活発な展開とSuperFilterなどHTS製品の更なる拡販が期待できそうである。

(高麗山)