信頼性・長期耐久性能の検証については、平成15年6月3日の時点で累積走行距離が285,698kmに達し、また1日の走行距離記録は1,219kmに更新されている。使用している実験線の長さ(18.4km)を考えればいかに高密度に高速走行試験が行われているかがよくわかる。試乗者数は14年度だけで11,890人、累計では45,000人以上に至っており、多くの人にリニア技術の信頼性、完成度の高さが理解されてきている。
コスト低減技術の面では、新方式のガイドウェイ、新型地上コイルおよび高効率電力変換器の開発が報告された。新方式ガイドウェイは自立できる逆T字型断面形状を持っており、建設時だけでなく補正・取替といった保守においても作業性が向上するため、コスト低減に寄与するとのこと。新型地上コイルは、推進コイルが従来の2層から単層構造となり小型・単一化され、さらに浮上案内コイルと一体成形することによって、製作・取り付けコストが低減できる特長を持っている。また、リニア走行においては電力変換器によって速度に見合った周波数の電流を地上コイルに流すが、ここで使う半導体素子を従来のGTO(Gate Turn-Off thyristor)からIEGT (Injection Enhanced Gate Transistor)に置き換えたものが開発され、周辺部品数の低減による大幅な低搊失化と小型化が達成されている。
空力特性の面では、乗り心地を合わせた改善を目指した試験的な新型車両が設計・開発され、平成14年7月より走行試験が始められている。非常に長い流線型の先頭部が特徴的である。実際に車両運動、走行抵抗の低減や車内環境だけでなく沿線環境にも改善効果があることが確認されている。
平成16年度末には実用化のための基本的な技術の確立を目指しており、15年度にも引き続いて走行試験などが実施され、より高度な安全性・信頼性・耐久性が検証されるほか、更なるコスト低減のための技術開発や営業線適用に向けた性能評価のガイドライン策定に資する試験研究などが進められている。開発に携わる鉄道総研の関係者によれば「本年度に予定されているワンランク上の性能確認では、従来よりも20~30km/h高い速度域での試験も予定されており、開発陣は気を引き締めて実験に取り組んでいる」という。 尚、試乗会の編成が4両になり一回あたりの乗車人員が100吊に倊増され、また最高速度も500km/hに引き上げられているなど、リニア技術の完成度を体感し理解してもらう取り組みも確実にグレードアップしてきている。
図2 現行ガイドウェイ(上図)及び新方式ガイドウェイ(下図)
図3 現行コイル(上図)及び新型コイル(下図)
図4 IEGT素子の外形(左)と内部構造(右)
(serendipity)