富士電機では、これまでに九州大学、九州電力と共同で、Bi2223超電導巻線をサブクール液体窒素で冷却する方式の6.6kV/3.3kV-500kVA超電導変圧器を1996年に、22kV/6.9kV-1MVA器を2000年に開発している。本事業では、さらに高電圧、大電流容量化技術の開発を目指して研究を行っている。66kV、77kV階級では160kVの交流過電圧、400kVの雷インパルス電圧に耐えなければならない。高電圧化に関しては、まず、平成12年度に実施した66kV/6.9kV-10MVA器の概念設計に基づいて、ターン間、層間、一次-二次間を模擬した各種絶縁モデルコイルを設計、試作し、66Kのサブクール液体窒素中で耐電圧試験を実施して巻線絶縁技術を検証した。さらに、電流リードの高電圧化対策として、一次側用に66~77kVレジン含浸型コンデンサブッシングを開発し、絶縁モデルコイルと同様に各種耐電圧試験を実施して絶縁特性を検証した。大電流化技術については、10MVA器の二次巻線の定格電流が483A(二次側Δ結線にて線電流は837A)となることから、Bi2223線材を20並列(10並列×2条巻)導体として内径f330mmのモデルコイルに19回の転位を施して40ターン巻き、通電、分流特性を測定して、均等かつ健全に通電しうることを確認した(図1参照)。富士電機では、10MVA器の超電導巻線における交流搊失解析も終え、従来の66kV/6.9kV-10MVA油入変圧器の搊失が約100kWであるのに対し、超電導器の場合、侵入熱も含めて45kWと半分以下(66Kでの冷却ペナルティ15倊を仮定)になると予測している。
Super-GM交流機器技術部長椊田清隆氏は、「この成果は、配電変電所用の超電導変圧器や車両搭載用超電導変圧器の小型・軽量化に結びつくとともに、現在Super-GMにおいて並行開発中の超電導ケーブルと接続可能なさらに高電圧、大容量の超電導変圧器の設計研究にも大きく貢献する。」とコメントしている。計画通りに開発が進めば、来春には液体窒素冷却方式の66~77kV級の酸化物超電導変圧器の製作技術が実証されることになる。大局的には、酸化物超電導機器の電力機器としての可能性が認知され、超電導技術は新たな局面へ大きく前進すると期待される。
(RB in Q)