2002年度に、ORNLが設計した冷却装置が製作され、オークリッジ近くの工場で組立てられた。その冷却装置は、組み立て後、Waukesha社に送られ、真空容器内での試験によりクライオクーラーの定格能力が引き出せることを確認した。カロリメトリック法によるACロス試験がIGC社にて試作したテストコイルで実施され、ACロスが許容範囲内であることを確認した。このテストコイルは5/10MVA変圧器のコイルと同じ導体と巻枠でつくられたものである。予想通りACロスは、巻線端部で集中しており、コイルの中央部で最小となった。このコイルの試験結果は、フェーズⅢの30/60MVA器の設計計画に組み込まれる予定である。30/60MVA器への具体的な取り組みは、5/10MVA変圧器が完了し評価後に実施予定である。Mehta氏は言う。「この設計概念は、低温での高電圧に関連する課題をすべて解決できたという仮定に基づいている。我々は、これらの仮定を確認するために、この変圧器(5/10MVA)を系統に設置する必要がある。」
上記記事について富士電機総合研究所機器技術研究所の坊野敬昭氏は「紹介した米国グループのほかに、日本、韓国、ヨーロッパでも高温超電導変圧器の開発が実施されているが、当面の実用器は20~40MVAクラスと考えている点では一致しているようである。但し、日本やヨーロッパなどは液体窒素浸漬冷却方式を採用しているのに対し、米国グループでは真空容器内冷凍機冷却方式を採用しており、試験結果が明らかになれば、各冷却方式の得失が明らかとなり、どちらが有利かの指針が得られるであろう。試験結果の報告を待ちたい。」とコメントしている。
(ゆかな)