SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol.12, No.1, Feb. 2003

10. プルトニウム化合物PuCoGa5のTc=18.5Kの超伝導
_産総研_


 J. L. Sarrao et al., Nature 420 (2002) 297のプルトニウム化合物PuCoGa5の超伝導について紹介する。著者は米国ロスアラモス国立研究所のJ. L. Sarrao博士等とフロリダ大学のG. R. Stewart教授及び独国カールスルーエの超ウラン元素研究所のF. Wastin等であり、その協同研究の紹介である。現在超ウラン化合物が育成できる所は、上記の2箇所にほとんど限られ、我国では日本原子力研究所と東北大学金属材料研究所大洗施設で可能であるが、法的制限も多くプルトニウムに関しては難しいのが現状である。

 さて、PuCoGa5は図1に示すようにPuGa3の単位胞を2個重ねて、真中の層をCoの層で置き換えた正方晶(P4/mmm)の結晶構造である。単結晶はGaをフラックスとして自己フラックス法で育成される。比熱と磁化測定から求めた超伝導の性質を表1に示す。転移温度Tc=18.5 K、上部臨界磁場の傾きdHc2/dT = -59 kOe/K、比熱のTcでのとびDC/Tc=110 mJ/mol・K2、電子比熱係数g =77mJ/mol・K2である。これらの値を使ってWHH理論その他から推定された0KでのHc2は740 kOeと極めて大きい値である。この物質は類似化合物のCeCoIn5から推定すると、Co層が伝導に寄与せず準2次元電子系であると推定される。CeCoIn5では高温超伝導体と類似のdx2-y2型の超伝導であり、Tc=2.3 K、g=1000 mJ/mol・K2と重い電子系である。Pu化合物は、Pu3+の局在磁気モーメントを持ち、その結果5f電子と伝導電子の混成は大きくなく、電子比熱係数は比較的小さい。それだけバンド巾が広くなっている。3次元電子系の圧力誘起超伝導体CeIn3 (Tc=0.2K)、準2次元電子系の重い電子系CeCoIn5 (Tc=2.3 K)、PuCoGa5 (Tc= 18.5 K)、そして高温超伝導体と比較してみるのも興味深い。なお、UCoGa5は準2次元電子系でなく半金属のパウリ常磁性体、NpCoGa5は反強磁性体である。準2次元電子系とバンド巾がほど良く広いということが、PuCoGa5の超伝導に反映されている。


図1 PuGa3とPuCoGa5の結晶構造

表1 PuCoGa5の超伝導パラメータ

(鹿沼さつき)