さて、PuCoGa5は図1に示すようにPuGa3の単位胞を2個重ねて、真中の層をCoの層で置き換えた正方晶(P4/mmm)の結晶構造である。単結晶はGaをフラックスとして自己フラックス法で育成される。比熱と磁化測定から求めた超伝導の性質を表1に示す。転移温度Tc=18.5 K、上部臨界磁場の傾きdHc2/dT = -59 kOe/K、比熱のTcでのとびDC/Tc=110 mJ/mol・K2、電子比熱係数g =77mJ/mol・K2である。これらの値を使ってWHH理論その他から推定された0KでのHc2は740 kOeと極めて大きい値である。この物質は類似化合物のCeCoIn5から推定すると、Co層が伝導に寄与せず準2次元電子系であると推定される。CeCoIn5では高温超伝導体と類似のdx2-y2型の超伝導であり、Tc=2.3 K、g=1000 mJ/mol・K2と重い電子系である。Pu化合物は、Pu3+の局在磁気モーメントを持ち、その結果5f電子と伝導電子の混成は大きくなく、電子比熱係数は比較的小さい。それだけバンド巾が広くなっている。3次元電子系の圧力誘起超伝導体CeIn3 (Tc=0.2K)、準2次元電子系の重い電子系CeCoIn5 (Tc=2.3 K)、PuCoGa5 (Tc= 18.5 K)、そして高温超伝導体と比較してみるのも興味深い。なお、UCoGa5は準2次元電子系でなく半金属のパウリ常磁性体、NpCoGa5は反強磁性体である。準2次元電子系とバンド巾がほど良く広いということが、PuCoGa5の超伝導に反映されている。
表1 PuCoGa5の超伝導パラメータ
(鹿沼さつき)