図1には、成長したY-123相ウィスカーのSEM像を示す。仕込み組成Y1Ba2Cu3Te0.5Ca1.0の仮焼粉ペレットを、20-100%O2雰囲気中、975-995℃で5-10h部分溶融後1℃/hで900℃まで冷却することによって、長さ1.0-2.5mmのウィスカーが成長する。ここで、100%O2中の方が成長がよい。YサイトをCaが0.14程度置換していて、図2に示すR-T特性からそのTcは83K近傍であり、Tc直上で半導体的になるc軸方向特有の変化が観察される。Tcに近い温度で測定したc軸方向のJcは、80Kで2.0×105、81Kで1.2×105、82Kで4.4×104A/cm2と高い値である。図3には、Tc直下の82Kにおけるc軸方向I-V特性を示す。ジョセフソン接合特有のヒステリシスが観測され、東北大の山下努教授らによって固有ジョセフソン特性を利用したTHz帯高周波素子への応用、東大の下山淳一助教授らによってRのイオン半径の違いによるRとBaサイトへのCa置換、BaサイトへのCaとR置換、それにともなう超伝導特性などに示唆に富んだコメントがなされている。
この研究について東京大学の下山氏はさらに「今回のRE123ウィスカー成長の成功には正直、驚いた。もう少し大型化できれば様々な輸送特性の評価が可能になるので、最近Coated Conductorで注目されているCaドープRE123の物性の理解がさらに深まると思う。また、TeとCaの組み合わせが、他の高温超伝導物質だけでなく広く酸化物のウィスカー育成にも有効である可能性がでてきた。今後の展開に注目したい。《とコメントしている。
[参考文献]
1)M.Nagao, M.Sato, H.Maeda, S-J.Kim and T.Yamashita:Appl.Phys.Lett.79,2612(2001).
2)M.Nagao, M.Sato, H.Maeda, S-J.Kim and T.Yamashita:Jpn.J.Appl.Phys.41,L43(2002).
3)M.Nagao, M.Sato, H.Maeda, S-J.Kim and T.Yamashita:Physica C 377,260(2002).
(オホーツク流氷)
図2 Y-123相ウィスカーのc軸方向R-T特性
図3 Y-123相ウィスカーのc軸方向I-V特性