SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol.11, No.6, Dec. 2002

2.米国の高温超電導ケーブルプロジェクトに参画
_住友電工_


 住友電工が、高温超電導ケーブルのビジネス展開への足がかりとして、米国ニューヨーク州の州都であるオールバニー(ALBANY)市における、実線路での高温超電導(HTS)ケーブルプロジェクトに参画することを発表した。

 HTSケーブルは、①大容量の電力をコンパクトなサイズで送電することができ、既存のケーブルをHTSケーブルに置き換えることで、新規のルートを建設することなく、送電容量を増加できること、②送電搊失を既存のケーブルの1/2以下にすることができ、CO2、NOx等の地球温暖化ガスの排出量削減にも効果を発揮することから、次世代ケーブルとして期待され、これまで欧米および日本で開発が進められてきた。

 日本においては電力需要の伸びが鈊化しているのに対し、米国では都市部を中心に、電力消費の増加、送電設備の老朽化等により、送配電設備が上足しており、それを増強し、電力系統の信頼性を向上させることが国家的な急務となっているが、地下空間の稠密化や、建設ルートの確保難が、ケーブル増設の障害となっていることから、HTSケーブルは大いに期待されている状況にある。

 住友電工は、東京電力と共同で3心一括型高温超電導ケーブルの開発を進め、平成13年6月から平成14年6月の間に電力中央研究所において約1年間の実用性検証試験を3心一括型高温超電導ケーブルとして世界で初めて行い、安定で良好な特性を確認し、成功裏に終了したことが報告されている。

「住友電工では、HTS技術およびHTSケーブルは、エネルギー・環境分野での新技術・新製品の柱の一つとなる技術と考えており、実用化に向けての諸検討を進める上で、実系統のデモ試験は非常に有効であり、最も市場が期待される米国のデモプロジェクトに参画することとした。《とエネルギー環境技術研究所増田孝人主任研究員はコメントしている。

 オールバニープロジェクトは、米国ニューヨーク州オールバニー市郊外の実線路に約350m長の三心一括型HTSケーブル(35kV)を建設し、HTSケーブル運転のデモンストレーションを行うもので、米国スーパーパワー社(SuperPower, Inc.、米国ニューヨーク州)がプロジェクトを管理し、ナイアガラモホーク社(電力会社。 Niagara Mohawk Power Corporation、米国ニューヨーク州)が実線路建設の場を提供し、住友電工は、HTSケーブルの製造、敷設、試験を担当している。

 プロジェクト総額は4年間で約2,500万米ドルが想定されており、その一部は米国公的機関からのファンドを充当し、今後約1年間で詳細設計を実施し、ファンド確定後、ケーブル・機器製造、敷設を行い、2005年後半に運転を開始することが表明された。

 「住友電工は、これまで培ってきた技術および実績を、米国でのHTSケーブル実用化に活用し、米国をはじめとする世界市場へのHTSケーブル展開を検討してゆきたい。《とエネルギー環境技術研究所礒嶋茂樹所長は抱負を語っている。

(マグル77K)