SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol.11, No.6, Dec. 2002

11.超伝導フィルタを搭載した屋外型の小型受信増幅装置を開発

 _富士通研_


 富士通研究所の山中一典主任研究員らのグループは、IMT-2000無線基地局向けに高温超伝導フィルタを用いた屋外仕様の受信増幅装置の試作機を開発した(図1)。開発した装置は、基本的構成を通常型(非超伝導型)屋外受信増幅装置と同様な構成(ダイバシティ受信、受信RF低雑音増幅など)としながら、超伝導型ならではの低雑音特性と周波数選択性も優れるという高周波性能を示すと共に、冷凍機を搭載しながらも通常型と同様の容積(約15L)を実現している。

 IMT-2000(2GHz帯)などの移動通信の基地局装置の高性能化に向け、酸化物高温超伝導体(HTS)を用いた通信フィルタの開発が、世界各国で進められてきている。超伝導フィルタは、急峻な減衰特性を得るためにフィルタ段数を大きくしても、通過域における搊失が極めて小さいことは、すでによく知られている。しかし、一つの受信増幅装置として動作させる場合、超伝導フィルタを冷却する冷凍機のサイズや重量が大きな問題となってくる。国内の携帯電話などの移動通信基地局では、通常(非超伝導型)の無線機器の屋外の設置はよく行われているため、冷凍機を搭載した超伝導フィルタ装置を設置する場合でも、装置全体ができるだけ小型、軽量で、かつ想定される屋外での過酷な使用条件に耐えることが望まれる。

 今回の開発装置では、HTSフィルタなど被冷却物の小型化や熱負荷・熱流入の低減を図ることで、より小型の冷凍機が使用できたため、装置全体の小型軽量化が実現できたとのこと。(コネクタなどの突起部分を除いた外形はおよそW27cm×D15cm×H37cm、重さ約19kg。→1人で十分抱えられる大きさ。)

 この主要な技術要素として、HTSフィルタを構成する共振器を、独自の2重スパイラルパターンとするマイクロストリップライン型構造としたこと、さらにパッケージ材料の改良、実装方法(例えば、アルミ材パッケージの採用可能とする実装技術)の工夫等があげられる。これらにより、同様のフィルタ特性を持つ典型的なヘアピン形状のマイクロストリップライン型に比べてフィルタサイズを約5割に小型化でき、被冷却部への総熱流入も1W以下に抑制できたため小型な冷凍機を搭載できたとのこと。また、その冷凍機はパルスチューブ型を使用とのこと。今後、屋外試験などを継続していくという。

   なおフィルタ回路パターンの小型化について、富士通研究所の甲斐学研究員は「小型化しつつも低搊失を保つパターンを作ることがポイントの1つと考えている。《とコメントしている。

[参考文献]
1.富士通プレスリリース(2002.9.20, http://pr.fujitsu.com/jp/news/2002/09/20.html)
2.ISS 2002, 講演No.: FD-9 3.電子情報通信学会ソサイエティ大会、SC5-3(2002/9/13発表).

(通信のBoson)


図1 フロントエンド回路の顕微鏡写真