SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol.11, No.5, Oct. 2002

2.高精度超電導MRI“EXCELART SPIN Edition”を発表
―1.6倊の高S/N比化と3倊の高速撮影を実現!
_東芝_


 東芝が高磁場MRI装置の新製品、EXCELART SPIN Editionシリーズを開発し国内向けに販売開始した。新製品は、2001年度に国内の高磁場MRI市場でトップシェアを獲得したEXCELARTシリーズに対して、新開発の「SPIN Technology」を搭載することによって、診断の質と検査の効率をさらに高めた装置とのこと。「SPIN Technology」とは、新開発の高速イメージング法「SPEEDER」技術と、世界一の静音性で定評のある「Pianissimo」技術、検査の双方向性、リアルタイム性を高める新開発の「Interactive」技術からなる3つの技術の総称である。

 発表では、「SPIN Technology」が提供する顧客ベネフィットを中心に、以下に示す5つの特長をとりあげて大きくアピールしている。

 1. 約1.6倊の高S/N性能による体部画像診断
 2. 最大3倊の撮像スピードなどによる高い検査効率
 3. 操作回数50%カットの新ユーザインタフェースによる円滑なワークフロー
 4. 幅広い診断ニーズに応える豊富な臨床アプリケーション
 5. 東芝だけの「患者にやさしい静かな高磁場MRI検査」

   高速イメージング法「SPEEDER」技術は最近話題になっているパラレルイメージング法のひとつであるが、複数の受信コイルの感度分布を利用して画像再構成をする。この技術を使うと従来のデータ数より少ないデータで撮像できるため、撮像時間短縮が可能でさまざまな臨床応用に期待がかけられている。特に、人体の呼吸の動きや、蠕動運動による画質の劣化を防止でき、より高精度の画像を取ることが可能になる。

 しかし、時間短縮による画像S/N比の低下が避けてとおれないため実用的には問題が残っていた。東芝はこの問題を解決するため受信コイルのS/N比向上に努め、ついにS/N比を従来より1.6倊高い「SPEEDERコイル」の製品化を実現した。S/N比向上のためには16個の受信コイルを8個QD(Quadrature)コイルとして使用している。これにより、撮像時間を短縮してもS/N比を劣化させないきれいな画像を撮れるようになった。また、時間短縮効果も受信コイルの配列により方向性が決められてしまうためMRIの特長である任意断面撮像を実現するためには一工夫が必要であった。本「SPEEDERコイル」はこの問題を解決するため16個の受信コイルの配列を最適化している。

 今回は、体腹部用のSPEEDERコイルの販売であるが、この秋には頭部用のSPEEDERコイルの販売も開始するとのことである。

 世界一の静音性の「Pianissimo」技術は、高磁場中におかれた、傾斜磁場コイルに数百アンペアのパルス電流が流れることにより、ローレンツ力が働き発生する大きな騒音を33dBカットする技術である。騒音発生源である傾斜磁場コイルを真空容器で封じ込めて騒音カットを実現している。

 東芝医用システム社MRI開発部長の塙政利氏は、「MRI検査は時間が長くて、騒音も非常に大きい。今回のEXCELART SPIN Editionシリーズでは、検査時間の短縮と静音化を実現したが、今後更に患者にやさしいMRI装置の開発に注力して行きたい。」とコメントしている。

 詳細情報のURL:


図1 EXCELART概観


図2 SPEEDERコイル


図3 8秒撮像の腹部画像

               

(Mukku)