SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol.11, No.3, June 2002

7.Bi系超伝導線材のコスト低減に関する各社の見通し
_米ASC社, デンマークNST社, 米IGC社_


 シリコン単結晶引き上げ炉用HTSマグネットの完成、HTSトランスの開発、世界各社によるHTSケーブル実地試験の進行と次期計画の報道が続いている。いよいよBi系超伝導線材の応用も実用化への軌道に載りつつあるが、実用化をなお一層促進する為の鍵は当線材のコスト低減に有ることは言を待たない。ASC社Bi系線材専用新工場の建設完了が伝えられる(4月16日)一方、世界各社からコスト低減の見通しが発表されている。

 Superconductor Week誌(2002年3月11日号)によれば、この度電話会議においてAmerican Superconductor Corporation(ASC)社長のG. Yurek氏は、「ASC社は、現在200ドル/kAmの値段で多量の多芯型Bi系超伝導線材を供給することができる。そして5月半ばに立ち上げを始め今年後半に量産を開始する予定のデバンズ工場がフル生産(20,000km/yr)に入れば、50ドル/kAmの価格は明かに達成可能である。ただし、Pirelli社への支払いをカバーするため年率125kmの超伝導線材を売る必要がある。我々は、いま正にそれをやろうとしている。ケーブルメーカーは,1マイル長のケーブルを製造するのに100kmの線材を使用する。《と語った。

 次いで、Nordic Superconductor Technology(NST)社社長のJ. Farre氏は、同社の第一世代(Bi系)超伝導線材の開発及び販売計画を説明しながら、「当社は、2005年には50ドル/kAmで当線材を製造する計画である。2001年5月新工場に移転したので、フル生産時には1,000km/yrの生産能力で工場を稼動出来るだろう。他のHTS供給者に比較して極めて低い投資しかしていないので、当工場の搊益分岐生産量は300km/yrであり、他社の場合は数1,000km/yrに上る。換言すれば、顧客が他HTS供給者の投資を消却する為に支払うkAm当たりの価格は、ある場合にはNST社に比して25倊高くなろう。このことは、NST社が持続可能の健全なビジネスに於いて50ドル/kAmで線材を提供出来る為の鍵と考えている。《と語った。

 NST社のZEROMEテープは、NKT社により商用送電系統に設置された世界唯一の電力ケーブル(2001年5月以来50,000世帯に電力を供給している)であり、1999年世界最初の高温超伝導MRI装置がSiemens/Oxford Magnet Technologyにより製作され、2001年9月欧州最初のHTSモーターがSiemens社により製作された。NST社は、4年で二倊の拡大率で新工場建設を成功裡に完了して、移動及び再編成を行った。Farre氏は、「我々は、常に複数のケーブル会社と協同して事業を進めてきた。NST社をより大きな技術革新的工業グループ(デンマークのNKT社)が所有することにより、当分野で必要とされる統一性、事業能力及び明確なビジネスアプローチがもたらされる。《と語った。

 Bi系超伝導線材は、現時点で実用出来る唯一の導体であるが(第2世代のY系線材は2006~2010年まで実用にならないと多くの識者が予測している)、将来のその役割については著しい上一致が存在する。IGC-SuperPower社社長のP. Pellegrino氏は、Bi系超伝導線材を長期の送電・配電応用に対する候補とは考えてはおらず、「ASC社は現在実用出来る最高性能のBi系線材を製造している。我々の観点からは、実証機器例えばケーブル、トランス及びその他システムを試作・試験して、当技術を電力応用市場に適合させ、その効率を確認することは重要である。実証機器は、当分Bi系線材を使用しなければならないが、最終的にはY系線材がBi系線材を失墜させると考えている。その時期は、これら実証機器の商用化が始まる2006年頃となろう。《と語った。

 Pellegrino氏は、多くのHTS製造会社の最新の考えを恐らく最も良く集約して、「HTSは、今やビジネスに成りつつあり、全ての市場指標で確認出来る。我々が国際共同体として、次の数年間で多種の機器及びシステムをスケールアップし、実地テストで実証するならば、今後成長するビジネスに向かう軌道に乗れるであろう。《と述べたと云う。 尚、上記のコスト低減見通しに対する我国各社のコメントは、本誌8月号向けに企画中の「Bi系線材特集《に掲載する予定である。

(高麗山)