SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol.11, No.3, June 2002

6.製紙工場の廃水処理に超伝導磁気分離
_阪大、京都工繊大、岡山大、二葉商事_


 大阪大学大学院工学研究科の西嶋茂宏教授、京都工芸繊維大学物質工学科の中平敦助教授、岡山大学工学部物質応用化学科の武田真一助手らによる共同研究成果の企業化を目指して、新エネルギー・産業技術総合開発機構の基盤技術研究促進事業の試験研究プロジェクト「超伝導磁気分離を利用した製紙工場からの廃水処理システム《が進められている。

 従来、廃水処理には、対象となる汚染物質や原水の出所により、物理化学的または生物学的な処理法が用いられている。都市排水(下水)処理などでは微生物処理によって水溶性有機物質を汚泥に変え、凝集剤によって汚泥の含水率を下げ、分解した有機物を分離する活性汚泥法が一般的である。しかし、微生物による反応であるため処理時間が長く、さらに広い処理面積を要する欠点がある。廃水の浄化は両者のいずれかを選択、また両者を旨く組み合わせて実施しているのが現状である。

 製紙工場では工程で大量の水を使用しており、それとほぼ同量の廃水を出しているが、水資源の見直しによる処理水の再利用、環境保全の認識が高まるにつれて排出基準が強化される傾向にあるなど、その廃水処理に対して高度の技術を導入する必要が出てきている。特に再生紙製造工場などは再生ルートの確保のため都市近郊に立地しており、必然的に厳しい廃水の排出基準が設定されている。

 磁気分離手法を用いたフェライト化処理法による重金属含有廃水処理技術は環境保全の効果的な手法の一つであり、アルカリ水溶液中に各種重金属イオンと鉄イオンを共存させ、酸化することによりスピネル型フェライトとして担磁し、磁気分離によって廃水を浄化するものである。このプロジェクトでは、この重金属イオンの代わりに、水に懸濁、あるいは溶解している非磁性物質である有機物を担磁させて磁気分離する廃水処理法を開発している。言い換えれば、化学的手法による担磁(コロイド化学的担磁法)と物理的手段による分離(超伝導磁気分離)を行うことが特徴で、製紙工場から処理されてきた原水(化学的酸素要求量:COD = 150 O2mg / L)にマグネタイト、硫酸鉄、アルカリ水溶液を撹拌しながら順次加えることによって得られる処理水のCODは20 O2 mg / L付近まで下がることが確認されている。現在、一日500トンの廃水処理のシステムを構築するための基本設計が行われている。

 エネルギー問題や環境保全の観点からも、そして水資源の有効利用の期待を込めて、このプロジェクトの展開に注目したい。

図1 超伝導磁気分離フローシステム図

               

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