SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol.11, No.3, June 2002

3.Super-ACE 30m超電導ケーブル部分モデルの冷却試験を実施
_Super-GM, 古河電工_


 古河電工は、5月18日の低温工学・超電導工学学会において、30m長の超電導ケーブル部分モデルの冷却実験を実施したことを発表した。この研究は、経済産業省産業技術環境局のプロジェクト「交流超電導電力機器基盤技術研究開発」(Super-ACE)の一環として、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)からの受託により実施したもの。

 超電導ケーブルを運用する場合、数kmの超電導ケーブル線路に液体窒素を流通させて冷却する必要がある。従来、長距離超電導ケーブルの冷却実績は無く、冷却管の圧力搊失特性、初期冷却時の挙動、流体振動現象、超電導ケーブルの熱収縮問題等のデータが無い状態であった。本プロジェクトでは、平成16年に電力中央研究所横須賀研究所にて500mの超電導ケーブルの冷却試験を予定している。古河電工は、500m超電導ケーブルの予備試験として、30m長の超電導ケーブルモデル(図1)を作製して、臨界電流、断熱管の侵入熱、熱収縮、冷却管の圧力搊失など、長尺超電導ケーブルを設計するうえで必要となるデータの取得を目的に、古河電工の研究所内で30m超電導モデルケーブル試験を実施した(図2)。

 発表された成果のなかで、注目される点は、断熱管の熱侵入で、直線状態で1W/mという低水準の熱侵入を実現できていることであった。さらに、別の断熱管だけの実験では、直線状態で0.3W/mが実現できたと発表者が説明していた。30m超電導ケーブル部分モデル試験は、全ての実験は完了し満足いく結果が得られ、500mの長尺超電導ケーブルを作るための準備に入っているとのことであった。

 また、低温工学では発表されてはいなかったが、超電導ケーブルの交流搊失を測定する方法として、新しい方法を開発したと本誌に明かしてくれた。それによると、新しい交流搊失の測定方法は、熱的方法(カロリメトリック法)で、超電導ケーブル用導体から発する交流搊失を、冷却材として流れている液体窒素の温度を測定して求める方法で、そのための装置をSuper-ACEのプロジェクトの中で開発したそうである(図3)。この装置の、測定精度としては0.1W/mで、既に3m長さの超電導導体を測定サンプルとして、3kAまので交流搊失を測定したと説明していた。古河電工環境・エネルギー研究所の向山晋一主査によると、「古河電工は、超電導ケーブル用の導体の交流搊失低減技術として、過去ピッチ調整やフィラメントツイストなどの技術を開発してきたが、発表のたびごとに測定方法がおかしいのではないかとの疑問の声があった。この装置ができたことで、超電導ケーブル用導体の交流搊失を精度良く測定できる環境が整った。《と言っていた。更に、本装置の特徴は、超電導ケーブル用導体を熱的に正確に測定できることに加え、シールド付導体の交流搊失や、複数相が近接した状態での交流搊失、さらにY系超電導導体の交流搊失など電気的に測定技術が確立されていないものを評価できる点であると、付け加えていた。なお、これら2件の詳細については、今夏以降の国内外の学会などで発表される予定である。

    


図1 30m超電導ケーブル部分モデル


図2 30m超電導ケーブル部分モデル試験情況


図3 カロリメトリック測定装置

               

(ネアンデルタール人)