SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol.11, No.3, June 2002

12.単一磁束量子回路の高速動作 ―次々と実証
_吊古屋大学_


 吊古屋大学工学研究科の早川尚夫教授、藤巻朗助教授のグループは高速性が期待される単一磁束量子(SFQ)回路の高速動作実証に次々と成功している。

 SFQ回路は、半導体を凌ぐ数十GHzでの動作が数値計算では得られている。しかしながら、実験でそれを実証しようとすると、小さい信号レベルとその広帯域性のため、半導体計測機器では測定することができなかった。唯一の方法は、レート変換回路を被測定回路の入出力部におき、室温の計測機器とのアクセスは低速で、演算は内部クロックにより高速で実行するオンチップテスト法を用いることである。

 今回、吊古屋大学ではこのオンチップテストシステムのコンポーネントを、NEC、通信総合研究所、横浜国立大学とともに開発を進めているCONNECTセルライブラリに準拠する形で整備した。その結果、セルライブラリに登録されているセルによって構成された多くの回路が極めて容易に高速試験できるようになった。臨界電流密度にも依るが、概ね50GHzまでの計測は行えるという。また、コンポーネントの基本形は2入力であるが、簡単に多入力に変えられるよう拡張性を持たせた設計をしたという。 表1は、これまで吊古屋大学で計測・実証された回路の構成接合数と最高動作周波数を示したものである。回路はすべてセルをつなぎ合わせる形で設計されており、NEC標準プロセスを通して作製されている。すでに1000個以上のジョセフソン接合で構成される複雑な回路も、高速での動作が確認されている。このオンチップテストシステム用コンポーネントの有用性は、CONNECTセルライブラリ開発チームのメンバーであるNEC、通信総合研究所でも既に実証されている。

 開発に当たった藤巻助教授は、「このオンチップテストシステムを用いて、セルライブラリに登録されている大部分のセルが十分高速に動作することが実証された。この意義は、CONNECTセルライブラリの信頼性を上げるという意味で極めて大きいものである。また、高速で動作マージンが低下する場合でも、その原因の究明に役立っている。すでにCONNECTセルライブラリは、以上の実験を通して得た知見のもとに幾つかの改良を施しており、1万接合以上の回路が高速で動作するのも遠くはないだろう。《と話している。

表1 オンチップテスト法で評価された回路と動作周波数

(大菜)