SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol.11, No.3, June 2002

10.広がるパルス管冷凍機の応用
_岩谷_


 パルス管冷凍機はコールドヘッド部(低温発生部)に可動部品が無いことから低振動、長寿命の冷凍機として期待されている。しかし、長寿命が予想されるとはいえ、実際に長時間運転した実績は少なく、振動に対する要求がそれほど厳しくない用途では、既存のGM冷凍機やスターリング冷凍機との競合で特徴を出せず苦戦している。

 岩谷のパルス管冷凍機は、低振動を生かすために、圧縮機ユニットとモータユニットを別置きにし、コールドヘッド部とモータユニットを連結管で接続する構成で、冷凍部に生じる振動を最小限としている。液体窒素温度(77 K)以上での応用を主なターゲットとし、各種サイズの一段式のパルス管冷凍機を提供している。コールドヘッド部、圧縮機ユニットのサイズと冷却方式(空冷か水冷か)の組み合わせ、さらに連結管長さの組み合わせで構成が変わる。連結管は0.5mの長さが標準であるが、振動を嫌う用途には長さを2m以上とし、より低振動を達成している。これまでパルス管冷凍機が利用された主な用途としては、電子顕微鏡のEDS分析機用センサーの冷却、NMR用マグネットの液体窒素シールドの再液化、赤外望遠鏡用のアレイ素子の冷却等に使用実績がある。既にカタログになって販売されているもの以外に、用途に合わせて各種のコールドヘッドを製作しており、特に厳しい低振動化の要求に対しては、クライオスタットでの除振を組み合わせて実現している。

 パルス管冷凍機は設置方向で性能が変わることが知られている。低温部を下向きに設置した場合に最も冷凍性能が良く、傾けると共に性能が低下し、斜め逆向きで最も性能が悪くなる。しかし岩谷のパルス管冷凍機P301型及びP015型は設置方向による性能の低下が小さく、横向き、逆向き等どの方向にでも取付可能である。赤外望遠鏡用のアレイ素子の冷却では180度回転型のクライオスタットに取り付けて使用した実例もある。

表1 岩谷のパルス管冷凍機仕様

               

(近江富士)