SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol.11, No.2, April. 2002

2. 新型MRIマグネットを次々に開発
_米国STI社_


 我国の産業界では、長引く不況の為苦境が続いているが、その中で好況ないしは堅調を続けている数少ない業界のひとつがMRI業界である。昨年度の実績(新医療2001年6月号)によれば、年間設置台数は445台で年率10 %以上の成長率を示し、入れ替え台数120を除いた実稼動台数は4222台に達している。その内訳は、超電導磁石が73 %、永久磁石が26 %と超電導の優位性を持続している。新しい動きとしては、開放型マグネット等患者に優しいシステム或いは高速・高磁場マグネット等高機能性システムの導入が最近の傾向である。このような傾向に対応する新型マグネットの開発が最近米国から伝えられている。

 この度Intermagnetics General Corporation(IGC)は、新しい開放型高磁場MRIマグネットの試験完了及び最初の出荷を含めて、R&Dプログラムの最近における進展について新聞発表した。IGC社の新しい開放型マグネットは、1 Tの磁場強度、軽量及びアクテイッブ・シールド特性の点で、極めてユニークであるとのこと(http://www.igc.com/)。

 当高磁場開放型MRIシステムは、病院または画像化センターの任意階に、重く且つ高価な鉄シールド無しで設置出来るように設計されている。当マグネットは、フィリップス社医用システム“Panorama”1 T MRIシステムの心臓部を成しており、昨年の北米放射線学会の開催時に、治検進行中機器として導入されたものである。当1T MRIシステムは、広い患者収容スペースを有する患者に優しいマグネット設計がなされており、強力且つ多機能性の高磁場MRIシステムを実現している。ユニークな非対称性設計により、患者の不安を劇的に低減すると共に、診断及び処理能力を高めている。

 これに続いてIGC社は、フィリップス社医用システムの中核を成す“Intera 3 T”MRIシステム向けに、3Tマグネットの商用出荷を開始したことも明らかにした。当システムは、MRI市場の最高級用途即ち、高度神経症及び心臓疾患の診断と共に研究目的の市場を目指すものである。IGC社は、“Intera 3 T”を現在市場に存在する唯一の小型・超高磁場システムであると云っている。フィリップス社“Intera 3 T”製品部長のP.Folkers博士は、「IGC社の革新的マグネット設計により、フィリップス社は最初に臨床上実用的な3 Tシステムを開発することができた。当システムは、“Intera ”MRIシステムしての開放性とコンパクトさを共有しており、マグネットの長さと60 cm内径は統一されている。」と語った。

 IGC社のEpstein社長は、最近完了したフィリップス社によるMarconi Medical Systems買収についてコメントしながら、「フィリップス社は画像診断装置の世界市場でNo.2の地位を占める為の戦略的なイニシャチブを完了した。フィリップス社が自社の製品提供とMRI市場での地位を拡大する為に、我が社を戦略的パートナーとして組み込んでいることを誇りに思っている。」と語った。

 MRI世界市場の年売り上げ額は、およそ34億ドルと推定され、出荷台数は年率二桁のパーセントでの増加が続いている。当業界の専門家は、心臓疾患及び機能性脳画像化と画像誘導による手術等の新しい応用が、直ぐ超高磁場システムに対する需要を高めるだろうと考えている、とIGC社はコメントしている。

(高麗山)