SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol.11, No.2, April. 2002

16. 書評  Book Review


『シリコンの物語 エレクトロニクスと情報革命を担う』

フレデリック・サイツ著 堂山 昌男・北田 正弘訳  内田老鶴圃 2000年発行
ISBN:4-7536-6131-8 本体価格(税別) \3,500

 この書籍は書吊どおり「シリコンの物語」である。半導体・トランジスタ開発の物語である。超伝導については、2ページしか触れられていない。しかし、当然Bardeen博士について、語られている。物語は、ラボアジエや、シリコンを単体で取り出したベルセーリウスから始まり、ファラデー、マクスウエルらを経て、ビルゲイツまで至っている。この中でのドラマは、ショックレイがリリエンフェルトの電界効果トランジスタ特許で開発に行き詰まったことを始め、固体バンド理論のウイルソン、ベル研究所のケリーなど100吊の研究者が肖像とともに語られている。シリコンのことはほぼ完全に網羅された「吊著」である。シリコン超伝導温度は7.5 Kだが、皆様の参考になることを願います。著者は、サイツ氏(元米国物理学会会長)、訳者は堂山先生、北田先生。

『研究者』

有馬朗人・監修 東京図書 2000年発行 ISBN:4-489-00601-2 本体価格(税別) \1,800

 日本を代表する13人の研究者が、成功するための条件を秘伝している。ノーベル賞受賞前の野依先生や電子線ホログラフィーの外村フェロー、そして「超伝導のスポークスマン」北澤先生も載っているのが、なんと言っても魅力だ。主な目次とポイントを述べ、皆様のご参考となることを願う。

1.有馬朗人 東大吊誉教授 「成功するための・・・方法」
 基礎学力が必要。超伝導論の一歩手前・・・。優れた人に会うこと。

2.野依良治 吊大教授「事実の発見より、価値の発見こそが重要だ!」
 流行のテーマをやるな。論文引用回数16000回。

3.本庶 佑 京大医学研究科長 「オンリーワンをめざせ!」
 分子遺伝学。京大の伝統は「ナンバーワンよりオンリーワン」。一流誌に蹴られたとき、・・。

4.外村 彰 日立製作所フェロー 「世界を相手にする武器があるか」
 超伝導体を用いてAB効果の検証に決着。薄膜ニオブで磁束量子化の動く姿を初めてとらえた。「金曜講話」の話もあるよ。

5.北澤 宏一 東大教授 「君はマスター2年までに相転移を起こしたか?」
 高温超伝導のメカニズムは、バンド理論でなく、「強相電子系の物理」樹立にある。「トンネル顕微鏡」の開発で、「局所電子物性学」を切り開く!

6.森 重文 京大教授 「研究は間違えてこそ進展する」
 「ハーツホーン予想」の証明は、間違いから。研究の勘所。

7.小平 桂一 前国立天文台台長 「問題発見型の知性を磨け」
 ハワイの大望遠鏡「スバル」の責任者が語る、学生生活、論文の書き方、研究の壁は新発見の始まり。

(NORI)