SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol.11, No.1, Feb. 2002

7. アクティブシールド型700 MHz NMR用超電導マグネットを開発
_神戸製鋼所、ジャパンマグネットテクノロジー_


 神戸製鋼所は、同社の関係会社であるジャパンマグネットテクノロジーと共同で、アクティブシールド型700 MHz NMR(核磁気共鳴分析装置)用超電導マグネットの開発に成功し、ユーザーサイトに納入した。このマグネットは液体ヘリウムの沸点である4.2 Kで運転され、水素原子の共鳴周波数で700 MHzに相当する16.4 T(テスラ)を発生することができる。さらに、超電導シールドコイルを備えており、外部への漏れ磁場を従来の400 MHz(9.4 T)マグネット並に押さえている。

 核磁気共鳴分析装置は、サンプルの曝される磁場が高いほど分解能が上がるため、NMR用超電導マグネットは高磁場化に向けての開発が進められてきた。現在市販品としては800 MHz(18.8 T)(本誌Vol.7, No.5, 1998.10通巻35号参照)、開発品としては900 MHz(18.8T)(本誌Vol.9, No.5, 2000.10通巻47号参照)、920 MHz(21.6 T)(本誌Vol.10, No.3, 2001.6通巻51号参照)の完成が既に報告されている。しかし、これらはマグネットの大きさもさることながら、その漏れ磁場の大きさから、設置場所に制約のある一般ユーザーには受け入れ難い面があった。

 今回開発されたマグネットは、一般ユーザーへの普及をねらった最高磁場機種と位置づけられる。超電導アクティブシールドコイルを備えることで漏れ磁場を小さくすると共に、天井高さを低く押さえることで既存の研究施設建屋への設置を可能にした。神戸製鋼所、ジャパンマグネットテクノロジーでは、日本電子を通じて本マグネット1号機を既にエンドユーザーに納入したが、さらに今後、年間10台程度の納入を見込んでいる。

 本マグネットの製造を担当したジャパンマグネットテクノロジー製造グループ池谷大主任部員は、「アクティブシールド型700 MHzマグネットは、納入実績の多い800 MHzや600 MHzのNMRマグネットの製造技術を活かして、商品化をおこなった。来年度は納入台数の増加が見込まれ、品質に重点をおいて製造をおこなっている。今後は、さらに高磁場、またワイドボアのアクティブシールドタイプの話もあり、品質の安定したマグネットを供給していきたい。」と語っている。

 今回開発されたマグネットの諸元は以下の通りである。

*中心磁場強度   16.4 T *運転温度     4.2 K
*室温空間     54 mmφ *磁場安定度    0.02 ppm/hr以下
*漏洩磁場(0.5mTライン) *必要天井高さ   4573mm
  軸方向 3.32m      *液体ヘリウム補充間隔  60日以上
  径方向 2.44m      *液体窒素補充間隔    14日以上

<本件に関する問い合わせ先>
*ジャパンマグネットテクノロジー(株):渋谷(しぶたに)、笹野(ささの) TEL:03-5739-5210
  e-mail:super-kobe@info.kobelco.co.jp

*(株)神戸製鋼所:濱田(はまだ) TEL:078-992-5652 e-mail:super-kobe@info.kobelco.co.jp


写真1 アクティブシールド型700 MHz NMR用超電導マグネット


図1 NMR用超電導マグネットの漏れ磁場分布(0.5mTライン)

               

(Mecco)