SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol.11, No.1, Feb. 2002

2. 高温超電導ケーブルの試験結果一部公開さる
_東京電力、住友電工、電中研_


 横須賀にある電力中央研究所で、2001年6月以来、実用性検証試験が行われている100 m高温超電導ケーブルの試験が順調に進み、このほどその結果の一部が公開された。このプロジェクトは、東京電力と住友電工により開発された66 kV-1 kA-114 kVAの容量を持つ100 m長の三芯一括型ケーブル(本紙第51号にて紹介)を電力中央研究所・横須賀研究所に敷設し、長期にわたる課通電試験を行うものである。交流ケーブル試験は日米欧それぞれに、横須賀、デトロイト、デンマークで進められているが、日本のケーブルは三芯一括型であること、低温絶縁方式を採用していることなど、一歩進んだ設計になっており、世界的な注目を集めている。

 東京電力と住友電力ではこれまで超電導ケーブルの要素技術として導体化、低温電気絶縁、断熱管等の技術開発を行ってきていたが、これらの要素技術とシステム技術を統合し、実際のシステムとしてのケーブルの実用性能検証及び課題を抽出することを目的として、電力中央研究所を含めた三社共同でこの試験を進めている。

 実用性検証試験では1年間で4回の冷却試験が予定されているが、既に2回(5月末〜8月、9月末〜12月)の冷却試験が終了し、本ケーブルが所定の超電導特性、電気的特性を有していることが報告されている。本試験で既に得られた成果を抜粋して示すと次のようになる。

●初期冷却

 ケーブルは冷却された窒素ガスと液体窒素により徐冷され、冷却開始から約35時間後に全長がほぼ液体窒素温度に到達した後、循環冷却が開始された。

 尚、ケーブルの長手方向の温度分布は光ファイバーを用いた温度センサーにより、連続的に計測されている。冷却過程におけるケーブルの温度変化を図2に示す。

 ケーブルは冷却時に室温に対して約0.3 %の熱収縮を起こす。本ケーブルは三心を弛ませた状態で撚る施工方法が採用されており、これにより冷却時に熱収縮により発生したケーブルの張力は最大で9 kNに抑えられた。これは、上記対策を施さないケーブルを両端固定で冷却した時に発生する張力50 kNに対して、約1/5に軽減されるそうで、熱収縮対策の効果が確認されている。

●通電特性

 ケーブル導体の臨界電流値を実測すると、69 Kで4000 A、77.3 Kで2760 Aであった。77.3 Kの値を容量に換算すると、223 MVAに相当する。この実測データは、各素線の臨界電流値の総和と素線集合時の歪みや自己磁界の影響を考慮して計算された予想値とよく一致しており、ケーブル製造、布設および初期冷却の過程で特性が劣化していないことが確認された。(図3)

 また本ケーブルは超電導のシールド層を有しており、導体部に交流電流を通電した時には、シールド層に導体電流とは、位相が逆で、大きさがほぼ等しい電流が流れることが、シールド電流を測定することで確認されている。

●熱損失

 ケーブル両端の温度差および液体窒素の流量を測定することにより、断熱管の熱損失が求められており、その値は約2.5 W/mであった。続いて1000 Arms・50 Hzの3相通電を行った際の熱損失を同様に求め、断熱管の熱損失を差し引くことにより交流損失を求めると、約2.0 W/mであった。本ケーブルは超電導導体4層と超電導シールド2層からなるが、各層の超電導線巻きピッチを調整し、各層に均一電流が流れる構造がとられている。測定値はこの均流化モデルからの計算値とほぼ一致しており、長尺での均流化による低交流損失化と交流損失評価方法が妥当であることが示されたことになる。

●課通電特性

 線間電圧66 kVの電力系統における対地最高電圧(40 kV)をシステムに課電し、ケーブル部および端末部いずれからも部分放電が検出されず、かつtanδも良好であることが確認されている。その後循環冷却条件20 L/min、70 K のもと40 kV、1 kAの長期課通電試験が実施され、1回目の冷却試験、2回目の冷却試験でトータル1300時間を超える長期の課通電試験に成功している。さらに、長期試験後も部分放電及びtanδに異常のないことが報告されている。

●冷却サイクル試験

 1回目の冷却試験終了後、ケーブルは一旦室温まで昇温され、その後液体窒素温度まで冷却され2回目の冷却試験が開始された。この冷却と昇温によるケーブルへの熱機械的な影響を調査するため、2回目冷却試験時、1回目と同様に臨界電流値、シールド電流、熱損失等が調べられ、そのいずれも大きな変化がないことが確認されている。これから、現在のところケーブルは冷却サイクルの影響を受けず、良好な特性を維持していることが判る。

 住友電気工業エネルギー環境技術研究所主任研究員の増田孝人氏は、「本ケーブルは、三心一括型、長尺高温超電導ケーブルの世界初の長期試験で、これまで前半の試験が終了し、本ケーブルが77.3 KでAC2kA(230 MVA相当)級と当初の設計諸元を遙かに上回る送電性能を有し、かつ長期的にも安定していることが、明らかになってきた。今後は、負荷変動試験(3回目冷却試験)、過負荷試験(4回目冷却試験)の実線路を想定した試験を行う予定である。」とコメントしている。

               

(ゆきたん)