Rsは、誘電体共振器法を用いて測定することが多い。超伝導薄膜でサファイアロッドを挟むようなキャビティーを作製し、そのQ値からRsを算出する方法である。この方法の利点は、薄膜を加工しないでRsが測定できること、Rsの精度が極めて高いことである。しかしながら、従来、多く用いられている手法では、薄膜の中央部のRsしか測定できない。我々が最も知りたいRsマッピングの測定が出来なかった。東北精機工業では図1に示すような、液体窒素中で測定できるRsマッピング測定装置を試作し、販売すると発表した。Rsマッピングを測定するためには、液体窒素中で試料を精度良く移動させる機構を開発しなければならない。また、正確なQ値を測定し、Rsに変換する必要がある。コンピュータ制御により、完全自動化されたRsマッピング装置を開発したと担当技術者は胸を張っている。
図2(左)に、測定された3インチ丸のYBCO薄膜のRsマッピングを示す。測定周波数は22 GHz、測定温度は77 Kである。Rsの値に対応してカラー表示され、薄膜面内のRsの均一性、不均一性がすぐ分かるようになっている。また、同図(右)に、同じ薄膜のJcマッピングをドイツのライプチヒ大学のローレンツ教授に測定してもらった結果が示されている (Jc -scan Leipzig)。薄膜の中央部分が他の領域よりもJcが大きくなっている。これは、表面抵抗の値が中央部分で小さくなっているのに対応しており、両者に相関があることを示唆している。
このように、Rsマッピング装置は超伝導薄膜のマイクロ波損失の評価に極めて有効であり、マイクロ波パッシブデバイスに応用する薄膜の評価には不可欠な装置である。また、Jcの均質性の評価にも応用でき、パワーアプリケーション用薄膜の評価にも利用できる。詳しいことを知りたい方は東北精機工業取締役技術部長横尾政好氏まで(023-686-6511)。
(雪むかえ)