それは、このCSモデルコイル試験は磁界が13テスラと大きいばかりでなく、磁界を高速で変化させる運転に特色がある。この運転には巨大な磁気エネルギーの変化が伴い、電源設備がこのエネルギーを供給、さらに放出しなければならない。幸いにして、そしてこの理由でこの試験が日本の原研・那珂サイトで行われたのであるがJT-60臨界プラズマ実験装置の電源設備がこれを可能にしたのである。超電導の実験設備と巨大電源が、同一サイトにあるのは世界でここだけである。コイルを励磁するには、充分なエネルギーと電力が必要であるが、JT-60電源はこれが可能である。なぜならJT-60電源は世界最大のフライホイールを持った発電設備をもっている。実験(図参照)ではコイルに450MJ充電するのに回転スピードが575rpmから515rpmへ落ち、コイル電流が下がると再び560rpmへと戻る。フライホイールはエネルギーが500MJ放出し、390MJにまた戻ってくる。これはエネルギー転送往復約80%の効率、片道では90%の効率である。これは、SMES(超電導磁気エネルギー電力貯蔵)の実証試験を行ったに等しく、発電機と変換器込みでエネルギー効率は90%である。今回、電力の大きさはピーク6万KWに達する。小型SMESが電力平準化、安定化に役立つかの、規模としては充分な実証試験であったといえる。SMESの実証試験を核融合開発が期待しない内に達成してしまっているといってよいだろう。
核融合開発はエネルギーの開発が目的であるが、それだけではなく関連する理工学分野を刺激してその牽引役を果たすフロンティアとして期待されている。特に期待するのは開発が引っ張る波及効果。必要は発明の母。科学技術創造立国日本にとって、核融合実験炉ITERの研究に主体的に取り組んで行くことは戦略として重要である。国の格付けにより株価が変動する今のバブリーな国際金融下において、国際プロジェクトITERはコストパーフォーマンスの良い投資であると言えるのではないだろうか。
原研の寺門恒久氏ほかの報告書「JT-60電源を用いたITER中心ソレノイドモデルコイルのパルス通電試験」JAERI-Tech2001-056,2001.8より転載させていただいた。コイル電流が見事な直線で立ち上がり、下がっているがその陰でフライホイール付発電機が回転エネルギーの充放電を繰り返して頑張っていた様子が図1に記録されている。
(アトムビール)