SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol.10, No.6, Dec. 2001

5.物質・材料研究機構に超伝導材料研究センター発足
―独立行政法人化で組織一新―


 文部科学省の物質・材料研究機構は旧科学技術庁傘下の金属材料研究所と無機材質研究所が統合されて、本年4月に誕生した独立行政法人で、材料分野としてはわが国で最大級の規模を持つ研究機関である(理事長:岸輝雄元東京大学先端科学技術センター長、元通産省産業技術融合領域研究所長)。同機構では、内部研究組織のあり方に関する検討を続けてきたが、組織改革の一環として、10月15日に超伝導材料を集中的に研究する組織として、超伝導材料研究センターを発足させた。統合前の金材研、無機材研は、新物質探索、結晶構造評価、固有ジョセフソン効果などの基礎領域から、超伝導線材の開発などの基盤領域、NMR等の超伝導システムの開発などの応用領域に至るまで、幅広い超伝導材料研究で知られていたが、今回の超伝導材料研究センターの発足で、名実ともにわが国を代表する超伝導研究機関の一つが誕生したと言うことができる。

 センターでは、金属系、酸化物系、新金属系MgB2等において、探索、基礎物性解明等の基礎・基盤研究から実用レベルの線材開発、薄膜化等の材料化基盤的技術開発、超伝導デバイス開発研究、磁気分離やNMR等に適用可能な強磁場マグネットの開発等の応用研究に至るまで総合的実施を行うとしている。より具体的には、

・新規超伝導物質・材料の発掘、構造評価、物性評価および理論に関する研究
・酸化物系ならびに先進金属系超伝導物質の線材化に関する研究
・大面積完全結晶薄膜化、高品質単結晶育成、SQUID 素子技術等の情報・通信・計測への応用基盤に関する研究
・強磁場超伝導マグネットの開発と生命、環境分野への応用基盤に関する研究

の4分野を設定している。

 上記を実施する組織として、図に示すようにセンターには5つの研究グループが設置され、機構研究職員25名程度とポストドク等がここで集中して研究を行うことにしている。また、センター本体に加えてそれと連携して研究を行う組織として、サテライトを設置し幅広い分野を含む超伝導研究を総合的に実施していくことにしている。サテライトまで含めると、50名規模の機構研究職員が関係することになり、中核機関に相応しい陣容を誇っている。

 センターでは薄膜・単結晶グループのリーダーに山下努教授(東北大)を併任の形で迎え、エレクトロニクス分野での先進的な研究開発を強化するとともに、用途開発を目指したSQUIDグループを新設し、そのリーダーを企業に求めるなど、独立行政法人としての自由度を生かした野心的な展開が企図されている。さらに、センターの研究運営に関する助言を外部からも求めるために北澤宏一教授(東大)をアドバイザリーディレクターとして招聘するなど、学界、産業界の協力を得て、超伝導研究の一大拠点を築くための布陣を敷くことを決定している。センターのリーダークラス以上の研究者の顔ぶれを示すと次の通りである。

センター長:室町英治

副センター長:井上 廉

アドバイザリーディレクター:北澤宏一・山下 努

グループリーダー:

 新物質探索グループ/室町英治

 酸化物線材グループ/熊倉浩明

 金属線材グループ/竹内孝夫

 薄膜・単結晶グループ/山下努

 SQUIDグループ/糸崎秀夫

 センター長の室町英治氏は、「センターでは超伝導材料に関して、基礎・基盤研究、材料化研究、応用研究を集中的・総合的に実施することで、超伝導研究における日本の中心を目指し、基礎・基盤技術分野における先導的役割を果たしていく」と力強く抱負を語っている。21世紀初頭の科学・技術において、超伝導が大きな役割を果たすことは疑いがなく、新世紀が始まる区切りの年に生まれた超伝導材料研究センターへの期待も大きい。同センターの今後の奮闘を祈念したい。


図 超伝導材料研究センターの組織

(HP)