SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol.10, No.6, Dec. 2001

2.韓国と中国でHTS線材を用いる電力機器の開発プロジェクトが発進!


 最近、NIES諸国で高温超伝導(HTS)の研究開発の動きが活発化してきている。本誌でも掲載したように、昨年中国でHTSバルクを用いた磁気浮上車両が試作され、今春香港大学で一次元超伝導の発見が発表され、この度は韓国で本格的な国家プロジェクトの発進が報じられている。また中国では、HTS線材及び応用機器を開発するプロジェクトが進行中である。これら両プロジェクトでは、外国機関の参加が自由であるのが特徴である。我国からの参加も期待できそうである。

 以下、両プロジェクトの概要を紹介することとする。

●韓国のHTS電力機器の開発プログラム(韓国電気技術研究所)

 この度韓国科学技術省は、21世紀先端研究開発プロジェクトとしてHTS線材を応用する電力ケーブル、モーター、トランス等のHTS電力機器を開発する産官共同の研究プログラムを発足させた。当プログラムには、国立研究所、大学及び私企業を含む約60機関が参加しており、応用超伝導技術センター(CAST)が統括する。当プログラムの全開発資金には、次の10年間で同省が出資する約100 Mドルと産業界パートナーが特定研究に支援する同出資額の20-50%が見込まれており、韓国にとって比較的に大きなHTS研究プログラムになる模様である。当プログラムへの参加は、非韓国系機関にも開かれている。現在、韓国外の4研究所が当プログラムに参加していると云う(Superconductor Week誌11月19日号11月26日号)。

 CASTの応用超伝導研究開発プログラムには、三つの主領域即ち電力機器、デジタルデバイス及び共通技術が含まれている。各領域には、下記のように三つの期間毎に特定の目標を持つ特定プロジェクトに焦点が置かれている。

1)伝導電力機器-焦点領域は、地下ケーブル、トランス、限流器及びモーターである。
2)超伝導デジタルデバイス?計算・論理デバイスに焦点が置かれる。
3)超伝導共通技術-PIT線材及び厚膜導体技術、低温技術、電力システム技術等。

 当プロジェクトのスケジュール表は、三つの期間に分かれている。第一期(2001-2003)の目標は、電力ケーブル、トランス、限流器、モーター及び計算・論理デバイスを含む電気機器に適したHTS線材及びシステム技術を開発することである。第二期(2004-2006)は、HTS線材を用いた電力ケーブル、トランス、限流器及びモーターの開発・試験と計算・論理デバイスの開発を目指すものである。第三期(2007-2010)では、商用規模の電気機器を開発・試験し、産業界が市場性のある諸電気機器を実用化するのを支援する計画である。

 Nexans Superconductorsは、子会社のNexans Koreaが当研究プログラムで使用されるHTS線材を韓国電気技術研究所(KERI)へ供給する協定書に署名した事を明らかにした。Nexansの発表は、同協定書を当研究プログラムへ線材を供給する商契約としているが、KERIは一つの研究プロジェクトであると述べている。KERI応用超伝導グループ長のY.Kwon氏によれば、当プロジェクトの目標は、HTS線材を作製する為の製造技術を開発する事である。KERIとNexans Koreaは、他の研究所及び会社を含むHTS線材研究チームの一員であり、HTS線材を供給するのが目的でなく、Bi-2223テープの研究開発を実施するのが主任務である。彼等がBi-2223テープの開発に成功したならば、その時同テープを諸プロジェクトへ売る機会が出てくるという。

 Nexansは、1997年以来KERIと米国のMITと提携しながら韓国の超伝導研究プロジェクトに関与してきた。Nexans Korea副社長のL.Jong-Gun氏は、『当プロジェクトでこのように重要な役割を担えて大変嬉しい』と語った。Nexans Koreaは、2001年3月NexansがDaesung Cable株式の51%を取得した結果として設立されたものである。同社は、2000年度の売り上げが135 Mドル(輸出比率30%)に上り、275名の雇用者を有する韓国で四番目に大きいケーブル製造会社である。

●中国のBi-2223テープ製造及び応用プロジェクト(清華大学応用超伝導研究センター)

 最近、中国を訪問した米国のHTS研究者からの情報によれば、清華大学のApplied Superconductivity Research Center(応用超伝導研究センター)は近年、超伝導線材開発や超伝導応用研究を積極的に推進中とのことである。因みに、清華大学は中国で最も有名な大学の一つで、北京の北西郊外に位置し、55学部7146名の教職員と学部大学院合せて21,000名の大学生を擁している。前記の応用超伝導研究センターは、2000年に設立されたProf. Zhenghe Han 他11名の教職員と10名の大学院生からなる多専門に亘る研究センターである。最近は、Bi系線材・Y系厚膜導体や新材料・新プロセス開発及び新しい超伝導応用について研究を行っている。応用超伝導研究センターの主目的の一つは、清華大学内の各部門に超伝導研究開発に対する関心を広く喚起する事である。既に、物理学科が薄膜やマイクロ波デバイス(フィルター)を取り上げ、材料科学技術学科は厚膜導体や機械的変形を研究し、自動制御・精密機器学科はMAGLEVを研究し、原子力研究所がHTS粉末を開発している。

 応用超伝導研究センターと提携して事業化を進めるベンチャーのInnova Superconductor Technology (Inno ST)社は、2000年に設立され、その本社は北京市の経済技術振興区域に置かれている。Inno ST社は、中国初の本格的な超伝導関連製造会社であり、HTS線材とそれを応用した電力基盤整備及び電磁気製品を開発し、製造している。新たに設置した北京の施設により、同社の線材製造能力は年産200 km以上に増強された。当Bi系線材の仕様は、以下の通り。

超伝導材料:Bi-2223 (Tc=110K) テープ幅:3.00〜4.00mm  歪み:0.2%(3%Ic劣化)
線材構造:多芯型        テープ厚:0.18〜0.22mm   Ic>40A(77K 0T)
単  長:〜1000m       耐応力:100MPa(5%Ic劣化) Je>7000A/cm2(77K 0T)

 上記の超伝導特性は、日米の線材メーカーの値に比べ若干低いが、今後改良し得るとしている。Inno ST社は、広い範囲の高性能HTS線材を開発・製造し、国内及び国外市場へ付加価値の高い顧客サービスを提供すべく努めている。それに加えて、Inno ST社は国際的超伝導線材会社のパートナーとなり、中国内顧客とのビジネス連絡役を果たすよう希望している。

 Innopower Superconductor Cables(Innopower)社は、Inno ST社と雲南電力グループ(YEPG)との合弁会社で、中国に於ける最初のHTSケーブル製造会社である。Innopower社は、30m長のHTSケーブルを二年間で製造・設置する予定である。YEPGは、中国南部都市地区と海岸都市に対する主な電力供給者であり、発電所、送電線及び配電分野に特化している。Inno ST社とInnopower社は、非常に大きな開発資源、投資資金及び技術専門家を入手するルートを有していると云う。

(こゆるぎ)

InnovaSuperconductorTechnology: Tel:+861062780833 Fax :+861062780830 E-mail:innost@innost.com

InnopowerSuperconductorCables:Tel:+861062780833 Fax:+861062780830 E-mail:innopower@innopower.com

AppliedSuperconductivityResearchCenter(Prof. Zhenghe Han):Tel:+861062785730 Fax :+861062785913 E-mail:z.han@tsinghua.edu.cn