SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol.10, No.6, Dec. 2001

19. 設置姿勢に自由度のある小型パルス管冷凍機
_住友重機械工業_


 住友重機械工業(株)は、冷却ステージが鉛直下向きの姿勢から水平姿勢まで設置方向自由な5W@80K小型パルス管冷凍機(SRP-1512A)をこのほど発表した。これは、一昨年に10W@77Kパルス管冷凍機(SRP-2620A)、昨年にこの10Wパルス管冷凍機を使った窒素再凝縮器(SRPC-160)の商品化に続き、同社三つ目のパルス管冷凍機の関連商品である。

 同社が発表したのはいわゆるGM型と呼ばれるパルス管冷凍機で、主に高圧ガス源と低圧ガス源を発生する圧縮機、高低圧を周期的に切り替えるバルブユニット及び可動な機械部品を持たない冷却部(コールドヘッド)によって構成される(図1)。一昨年に同社により市販された10Wパルス管冷凍機は4mという長い連結管(バルブユニットからコールドヘッドまでの配管)を有するため、圧縮機やバルブユニットからの振動を冷却部に伝わらないように適切な振動対策を施すのに大変便利で、好評であった。しかし、冷却ステージが鉛直下向き以外の姿勢で冷凍能力が著しく低下することや、3相200Vの電源が必要であることなどいくつかの制約があった。それに対して、今回商品化したSRP-1512Aは、連結配管が長いという長所を継承しながら、大きな特徴として、単相100V電源駆動と、冷却ステージが鉛直下向きの姿勢から水平姿勢まで設置方向が自由であることが挙げられる。

 10月に福井工業大学で開かれた低温工学・超電導学会において発表を行った、同社クライオユニット部設計技術課の開発担当者小倉鉄也氏によると、「冷凍機の設置姿勢による冷凍能力の低下は主にガスの自然対流に起因するもので、それを抑えるために、パルス管冷凍機の運転周波数を上げるのがポイントである。今回のSRP-1512Aの開発に当たって、運転周波数と位相制御ためのオリフィス径の選択に多くの時間を費やした」という。

 同社提供の資料によれば、SRP-1512Aのコールドヘッドの重量は1.8kgで、小型軽量である。最低到達温度は55K以下で、80Kにおける冷凍能力は5W以上である。連結配管長は標準で2mであるが、1mの延長につき冷凍能力は約1W@80K低下する。冷凍能力の設置姿勢依存性について、図2に示したとおり、冷却ステージが鉛直下向きの姿勢(0度)から水平姿勢(90度)までの範囲内であれば、冷凍能力の低下は8%以下に抑えられている。しかし90度以上の設置姿勢では、冷凍能力の顕著な低下は依然避けられない。圧縮機は空冷タイプで、冷却水を必要としない。必要とする駆動電源は100V単相のみで、消費電力は定常時1.0/1.2kW(50/60Hz)と、家庭用のドライヤー程度である。コールドヘッドは可動部品がないのでメンテナンスは不要だが、圧縮機やバルブユニットの部品交換は20000時間毎だという。また用途について、100V仕様、省電力、小型軽量、設置姿勢に自由度があるという特徴から、実験室や、今まで冷凍機応用の少ない分析機器分野などが主な対象だと考えられる。

 なお、同社は2段式4Kパルス管冷凍機についても開発を強化しており、早期の市場投入を目指しているという。


図1 SRP-1512A型パルス管冷凍機のシステム構成


図2 冷凍性能の姿勢依存性

               

(森のすもも)