SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol.10, No.6, Dec. 2001

17. 高遮断特性高温超電導フィルタの小型化に成功
_クライオデバイス社_


 株式会社クライオデバイスは、高遮断特性を維持した小型化のフィルタを新たに開発した。図1にフィルタの写真を示す。基板サイズは2インチφであり、段数は24段である。クライオデバイスでは今までに段数32段で究極の遮断特性を持つフィルタを開発してきたが、この32段フィルタの基板サイズは3インチφであった。フィルタのサイズが大きいと室温部からの輻射熱流入量が大きくなり、クーラーの冷凍能力を上げる必要がある。これはクーラーのサイズならびに重量増加につながり、建物の搭頂への設置を前提にした場合にはマイナス要因となってしまう。また3インチφでは基板やHTS膜の材料費も高くなってしまう。今回の開発の背景にはHTSフィルタシステム全体の小型・軽量化、更には低コスト化がある。

 フィルタを小型化にする際、HTSフィルタの特長である高遮断特性は維持しなければならない。32段フィルタで採用したJ型共振器をそのまま2インチφ基板に適用すると段数は18段までしか搭載することできない。そこで共振器形状を改良して24段までの搭載を可能とした。図2に24段フィルタの周波数特性を示す。中心周波数は1950 MHzであり、通過帯域幅は20 MHzである。遮断特性は低周波側、高周波側共に40dB/1MHzが達成できている。通過帯域における挿入損失はトップで0.25 dB以下、バンドエッジで0.8dB以下と低損失性を維持できている。また通過帯域内におけるリップルは0.1 dB以下である。反射損失も20 dB以上が確保されている。同社第1技術部部長の榊原伸義氏は「前回の32段フィルタはHTSフィルタのポテンシャルを最大限に引き出したものであったが、今回の24段フィルタで技術的には実用化が射程距離に入ってきた」とコメントしている。


図1 新開発フィルター(24段)の写真


図2 24段フィルターの周波数特性

               

(エベレスト)